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 実は今日って特別な日なんだよねー。

 スライが私の専属メイドになって一ヶ月。私は心の中でそう呟く。

 スレイが私を誘拐するのが今日だから。


 実は、半月前、スライがこそこそ何かやってるのを見ちゃったんだよねー。

 一応この人暗殺者だし、見張ってるんだよ、日常から。

 で、心を読んでわかったことなんだよね。


 依頼人はどうやら貴族らしい。まぁそうだよね。だって、執事長がここにいる人は全員貴族の推薦を受けているって言ってたし。


 私は今スレイと同じ部屋に二人っきりでいるが、そんな素振りはない。


 だからこれは確実に起こるだろう。

 対処するよ、私がマフィア『影炎』の本拠地に行けるように。


 スレイはどうやって私をさらうかということも思い浮かべていたので、本拠地には行けそうな気がするんだよねー。


 スレイの作戦は、こう。



1、十時くらいになって、私が寝たら魔道具で屋敷にいる全員を眠らせる。


2、私が途中で起きないように精神魔法『スリープ』をかける。


3、部屋から脱出して私を本拠地に連れて行く。


4、私を依頼人に受け渡す。



 こんな感じらしい。

 魔道具はずっと持ち歩いていたようだ。

 横目でスレイを見る。

 そして、スレイがつけている小さいブローチに『鑑定』をかける。


『魔道具:睡蓮のブローチ

 詳細:精神魔法『昏倒』が込められている。

    効果は2日間(変更可能)

 範囲:使用者から半径三百メートル以内の生物(使用者を除く)(変更可能) 』




 なるほど、こういう魔道具も作れるのか。

 私は普段、生活に使うものぐらいしかつくらないからなぁ……。

 いつか作ってみたいものである。


 まぁ、この魔道具も、スキル『状態異常無効』があったら効かないと思うし、大丈夫だろう。ゲームでは『昏倒』は『スリープ』の上位の魔法で、状態異常という扱いだった気がする。


 

 でも、私が起きていたら混乱するだろうし、寝たフリはするけどね。

 状態異常にかかっていることは鑑定すればわかるけど、スレイはスキル『鑑定』を持ってないみたいだし、他の魔道具も持ってないから大丈夫。多分寝たフリもばれない。









 そして夜になった。


「リエラ様、おやすみなさいませ」

「うん…」


 少し眠そうな声で返事をする。

 そして、私に近づき、私の額に手を乗せる。

 さらに、何かボソボソ呟き始めた。


 ……あ、これ詠唱だ。

 この世界の人々は、特別なスキルを持ってない限り魔法を使うには影響が必要なんだった。

 自分は詠唱しないから忘れてた。


 そして、魔力が私を覆うのを感じる。どうやら『スリープ』をかけたようだ。予定通り。


 私は目を閉じる。寝たフリだ。

 すると、スレイは私の体を抱きかかえた。


 また、ボソボソ声が聞こえる。魔道具を使うのにも詠唱がいるのか。大変だな。


『スリープ』の詠唱は数秒だったけど、魔道具の詠唱は中々長い。大体一分くらい。

 多分、それだけすごい魔道具ということだろう。


 スレイは私を抱えたまま、何かを呟きながら走り始める。

 そして感じる浮遊感。

 窓から飛び降りたのか。


 でも、着地の衝撃はあまり感じない。

 目を閉じてるから鑑定できないけど、スレイの魔法適性は確か、風と地、精神だったかな?

 地魔法で衝撃を地面に吸収したのか、それとも風魔法で落下速度を着地前に緩めたのか…わからないけど、魔法の参考になる。

 なかなか他の人が使う魔法を見る機会がないからね。



 スレイ再び走り始めたが、速度を緩める素振りはない。

 このままアジトに直行か。

 ちなみに、走ってるけど、揺れが少ない。これは暗殺者だからなのかな?足音もない。すごく快適。



 数十分間走り続けて、ようやく止まった。

 と思ったら、下り始めた?

 どうやら階段を降りているらしい。

 悪役の本拠地って地下にありがちだよね。ここのマフィアもそうなのかも。



 数十段階段を降りて、立ち止まる。


「久しぶりだな、今はスレイって名乗ってるんだったか?」

「そうよ、でも無駄話をしている暇はないんじゃない?

 公爵家に出入りしている者に気づかれたら大変だから、早く戻って『昏倒』を解きたいんだけど」


 私は目を開ける。

 スレイと話しているのは、大体30歳前後に見える男性。

 背が高くて、顔が厳つい。190センチはありそう。

 体型はヒョロっとしてる?でも、多分強いと、魔力を見たらなんとなくわかった。


 ちなみに、スレイはそんなに背が高い方ではない。160センチくらいかな?この二人が並ぶと身長差がよくわかる。


「そうだな、じゃあ公爵令嬢を――」


 言いかけたところで動きが止まる。

 そして、バッと後ろに下がった。バックステップみたいな感じと言ったらわかるだろうか。

 私が目を開けて、男の方を見ていたからだろう。

 スレイはそんな男を不思議そうな目で見る。


「急にどうしたの?」

「……おい、『スリープ』を掛け忘れたのか?」


 スレイも、慌ててバッと私の方を見る。

 目が合う。

 とりあえず微笑んでみる。

「……何で」


 スレイが呆然とつぶやいた。

 そして、私から腕を離した。

 ……ちょっと、お姫様抱っこの状態から落とすのはひどくないか?


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