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あれはやばい。化け物だよ。勝てる気がしない。
思い出すだけで鳥肌が立ってきたので、この話はここで終わりにしよう。
で、本題。
昨日の朝、久しぶりに侯爵邸に戻ったのだが。
朝起きるとメイドが来て、私にこう言ったのだ。
「本日、お嬢様には専属メイドを選んでいただきます」
やっと!やっと!私にメイドがつく!
専属メイドについて説明する。
まず、今まで私の世話をしてくれていたメイドは、私のメイドじゃない。
正確には、この家の家主であるお父様のメイドだ。
よって、私が命令しても、それがお父様からの命令に背くものであったら、命令を聞いてくれないということだ。
しかし、専属メイドの主人は私。
つまり、お父様が命令しても、私の命令の方をきくってこと。
いやぁ、専属メイド、前からほしいと思っていたんだよねー。
何故かと言うと、スキル『鑑定』でメイドたちを鑑定していたら、称号に『ルベル王国の諜報員』とか、『ベナティア家所属の暗殺者』とかあったんだよね。
そして、公爵令嬢につけるメイドに、戦えない人がなるとは考えにくい。
十中八九、暗部の人が護衛兼メイドになるはずだ。
私はスキル『暗殺術』を持ってるし、観察させてほしい。
明日の朝決めるというので、さっさと寝る。明日が楽しみだ!
おはようございます!
現在、朝の七時くらい。
実は、時計を作るのに成功したんだよね。
時計を生産魔法で作って、時空魔法を付与魔法で付与したら、勝手に針が動きはじめた。
すごく感動したよ。時刻の設定なんて何もしてないのに正確に動くんだから。
まぁ今はそんなことはどうでもいい。
メイドを連れて食卓へ向かい、朝食を取る。
急いで、しかしあくまでも上品に。
スキルのマナーがカンストした私は、意識しなくても全ての行動が上品に見えるみたいだ。すごいよね。
ちょうど朝食を食べ終わる頃に、執事長がやってきた。
執事長は、主にお父様の補佐をする仕事。そして大勢の執事のトップに立つ人だ。
そう、やってきたのだ……後ろにたくさんのメイドさんを引き連れて。
うわぁ…数えなくてもわかる。これ、軽く五十人を超えてるんじゃない?
よくこんなに人を集めたね…まぁ、侯爵令嬢の侍女ともなれば給料はいいだろうし、当然のことなのかも。
「この者たちは、他の貴族様がたによって身元を保証されております。
よって、この中から専属をお選びください」
と執事長が言って、メイドさんたちは全員頭を下げる。
一人ひとり鑑定をかけていく。
そうそう、鑑定がカンストしたことによって、他の人のステータスも見れるようになったのだ。
レベルが低いうちはほとんどの情報を見ることができなかったけど、今となっては全ての情報を見ることができる。
この世界には個人情報保護法なんてないのだよ!他人の個人情報見放題!
しかも、鑑定をカンストしたら、『読心』っていうスキルも生えてきたし。
さすがにこれはやりすぎかなって思って、あまり使っていない。相手が何を考えているかわからない時や、怪しい人がいた時くらいにしか使わないようにしている。
だって嫌でしょ?心の中を勝手に覗かれるの。
ついでに私の気分も悪いしね。このスキルはしばらく封印しておこう。
まぁそれは置いといて。一人一人、ステータスを見ていこう。
…やはり、戦えない人はいないようだ。基礎ステータスが300を下回っている人は1人もいない。そして称号を見ると、ほとんどの人が暗部に所属している―――あ。
この人にしよう。
「執事長、この人にします」
私が選んだのは、大体二十歳くらいに見える、黒い髪に緑色の瞳の女性。
そしてこの人は――
『称号:マフィア『影炎』の暗殺者』
マフィアの関係者。
「謹んでお受けいたします」
そう言って、目の前の暗殺者…そして私の専属メイドが頭を下げる。
あ、名前を聞いていない。
「おなまえは?」
「スレイと申します」
スレイさん、か。
偽名だな。
だって、鑑定に『名前:オルティア(偽名使用中:スレイ)』って表示されてるもん。
鑑定、便利。
まぁひとまずはスレイと呼ぶことにしよう。
そこからは、執事長にに「部屋でおくつろぎください」と言われたので、大人しく戻った。
執事長ととスレイは何か手続きをする必要があるようだ。
さて、暇になったし図書館で本でも読もう。
そして昼になり、スレイが図書館にやってきた。
「本日より、正式にリエラルオーティ様の専属メイドとなりました。スレイでございます。
これからどうぞ、よろしくお願いします」
そういって、綺麗にお辞儀。あぁ、この世界ではカーテシーって言うんだっけ?
「よろしく」
私はそう返事をしながら、再びステータスを覗き見る。
『名前オルティア(偽名使用中:スレイ)
年齢:19歳
種族:人間
出身:ルベル王国
レベル:38 』
え、このこ19歳なの!?
もうちょっと年上かと思った。
なんというか、纏う雰囲気が……なんか過去で苦労したんだろうなって感じなんだよね。
まぁ、この人暗殺者だし、何かないとそんな職業につかないか。
さすがにじっと見過ぎて、「なにか?」と言われてしまったので慌てて目を逸らした。