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 試験会場は外にあって、小学校の運動場くらいの広さ。

 そして、そこに一人の人が、剣を持って立っていた。


「試験官、冒険者を連れてきました」

「あぁ、承知し―――うん?その子かい?

 ず、随分と可愛らしい子だね?」


 はい、この人優しい人決定。優しい人じゃなかったら、「なんだこの弱そうなチビは」くらいは平気で言っている。


 そんなことを考えている間にも、受付嬢と試験官の間で話は進んでいる。


「絶対に、怪我はさせないでくださいね!?あと、降参ってこの子が言ったら、すぐに攻撃をやめてくださいね!絶対ですよ!?」

「わかったって……」


 なんか気が引けるな。


「よし、そこに立って。あぁ、武器はこの木造の短剣を使うといい。もし壊れても怒られないから。

 うん、やはり君の手のサイズにピッタリだな」


 だって、飛び級するためにはこの人をボコボコにしたいといけない。


「それじゃあ私の合図で試験開始です!」


 それならせめて、


「開始!」


 一撃で葬り去ってくれる!



 私は受付嬢の合図で一気に試験官の後ろへ回り込み、手刀を首に叩き込む。もちろん手加減はしている。

 試験官は白目をむいて意識を失った。

 どうだ。これがステータス高さによる暴力!


 受付嬢がドン引きしているが、構わず私はドヤ顔をして胸を張るのだった。


 その後。

 なぜか私は他の試験官たちに、次々と勝負を挑まれている。


 もちろん、開始と同時に手刀で意識を奪っているが。

 なんでこんなことになってるんだ…!



 始まりは試験後。

 私はギルド長の部屋に呼び出しを受けた。

 流石に心当たりがありすぎた。

 冒険者を平手打ちで沈めたこと、受付嬢に嘘をついたこと、試験官の意識を奪ったこと……さぁ、どれがばれたのだろうか。全部だろうか。せめて一個にして欲しい。



「失礼します」


 と言いながら部屋に入る。どうやらここは、ギルド長の執務室らしい。奥にある机の上に大量の書類が置いてある。

 そしてその机の前に低めの机と椅子があって、そこに紳士みたいな格好をしたおじいちゃんが座っていた。

 この人絶対ギルド長だ。


「さぁ、座りたまえ」


 席を勧められたので、その声に従って椅子に座る。

 侯爵邸の椅子ほどではないけど、この椅子もなかなか座り心地がいい。

 さぁ、本題だ。


「なんで私はここに呼ばれたんですか?」


 受付嬢が、紅茶とお菓子を運んできてくれる。

 目の前の紳士おじいちゃんはそれに口をつけ、答える。


「いや、君を何ランクに昇格させようかと思ってね」


 あれ?

 思ってたのと違った。

 絶対怒られると思った。

 雰囲気から戸惑っていることが伝わったのだろう。ギルド長は私に向かって微笑み、口を開いた。


「私たちが君に怒ることなんて、何一つもないさ。

 君が冒険者に絡まれていたのは事実だし、平手で吹っ飛ばしたのも正当防衛だ。

 それに、試験官が意識を失ったのも、試験官が君を舐めていたのが悪いんだからね」


 なんと、全部バレてるぅ……!!!

 いや、でも怒らないって言ってくれてるしよかった。


「でも、ほんとにそんな話を信じるんですか?

 自分で言うのもなんですけど、私4歳ですよ」

「もうその受け答えで賢さが測れるがね。

 年齢など関係ないのだよ。

 冒険者というものは、実力主義だ。

 弱ければ死に、強ければ生き残る。それが冒険者であり、君は実力がある。

 ならば、評価するのが当然だというものだろう?」


 ……いい人や…。

 なんか、感動した。

 何というか……初めて認められた感がある。

 私が感動していると、ギルド長は思い出したかのように言った。


「あぁ、それで、飛び級の件なのだが。

 私は君をS級にするべきだと言ったのだが、君の年齢を知ったものが、私が君を贔屓しているのでは、と言い出してね。その者は君の戦っているところを見ていないからしょうがないとは思うんだが。

 それで、提案なんだが」


 おじいちゃんは、私に向けてに向けてにっこりと微笑んだ。


「反対する者たちを、ぶちのめしてきてくれないかね?」


 おじいちゃん、見た目と言葉が全然マッチしてないよ!言葉遣いがわるいよ!






 まぁそんな感じで戦うことになったわけなんだが。

 とにかく人数が多い!

 いや、最初は試験官らしき人たち十数人しかいなかったんだけど、どうやらこの試験場、冒険者なら誰でも入れるみたいで。

 試験官と私の戦いを見た冒険者のうちの1人が、私と戦いたいと言い出したが最後。


 私はかれこれ一時間以上戦い続けている。


 いや、本当に人数多いよ!しかも、戦ってる人の中にはすでに見た顔が混じっているのだ。つまり、2回以上私に挑んできている奴がいるってことだ!

 冒険者、暇なのか!?おまえら、冒険に行ってこいよ!


 別に体力的にはまだまだ余裕があったが、精神的に疲れていた私はつい手加減を忘れて地面を殴る。


 ドッカーンッッッ!!!!



 爆発が起こったみたいに地面が抉れ、あたりは静まり返る。


 そして、私はそんな空気の中、口を開く。


「この地面みたいになりたい奴からかかってきなさい」


 冒険者たちは、一歩、二歩とジリジリ距離をとって、最終的には試験場から出て行った。


 よし、私の勝ちだ!


 あれ?目的ってなんだったっけ?


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