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さぁ、やってまいりました、昼間の平民街!
テンションが上がるのもしょうがない。だって、夜はここら辺も通ったことあるけど、昼間は初めてだもん。
夜には人がほとんどいないこの大通りだが、今では人で溢れかえっている。
すごい、ファンタジーっぽい光景だ!
満面の笑みで辺りを見渡していると、周りからくすくすと笑い声が聞こえる。
やばい、お忍びの人ってばれたかな?
しかし、まわりのひとたちは私が田舎から来たのでこの光景に感動していると思ったらしい。「王都を楽しんでねー」などといった声が聞こえる。よかった、正直少し焦った。
でも、狐の面を被っているのに特に突っ込まれなかったな。ありがたいけど。
もしかして厨二病だと思われたのかな!?そうだとしたらやだな…恥ずかしい。
私は気持ちを落ち着けて、ゲーム内で聞いた冒険者ギルドまで歩き始めるのだった。
そして、冒険者ギルド。
まず、建物がすごい。
私の想像では、ボロい建物に酒場が隣接されているイメージだったんだけど、この建物めっちゃ綺麗。
しかも、5階建てくらいなんじゃないかな?
さすが世界をまたにかける冒険者ギルド。規模が違う。
そんなギルドの中に、ドキドキしながら入る。
ギロッ
わ、中にいた冒険者から睨まれた!
お決まりのやつじゃん!よくラノベであるやつ!
狐の面を被ってなかったら、睨まれたのに全然怖がらず、逆にニマニマしている怪しい幼女に見られたかもしれない。よかったお面があって。
まぁ実際怖くないし。
こんなよわそうな人間が何人いようとも、絶対魔獣の方が強い。
しかも、私はスキル『恐怖耐性』持ってるからね。たぶん、恐怖って状態異常だから、高レベルの状態異常魔法を使われない限り恐怖は感じないんだと思う。
なので、視線は無視して受付らしきところに向かう。
「おい嬢ちゃん」
並んでいると、声をかけられた。
「はい?」
つられて返事をしてしまう。ついでに振り向いてしまった。
すると、声をかけてきたチンピラっぽい見た目の男性たちがゲラゲラと笑い出す。
「おい聞いたか!?
はい?だってよ!!!」
「ギャハハハハ!!!お嬢様かよ!」
いらっ。
ちょっといらっときてしまった。でも私の中身は大人。もとOL。こんなことではキレたりしないのだ。
「こんなところに来ちゃだめでちゅよーお嬢ちゃまー」
「お兄ちゃんたちみたいな悪いやつに絡まれちゃいまちゅからねー。
おうちへかえりましょうねー」
イライラッ。
いや、ダメだ。こんなところで騒ぎを起こすためにここに来たわけではない。
さぁ、気持ちを落ち着け―――れるか!!!
バチーンッッッ!!!
私の平手打ちが男の頬にヒットして、
バゴーンッッッ!!!
男が壁へ吹っ飛んでいった。
……やっちゃった。
いや違うんですよ。一応手加減はしたんですよ。叩く直前に思い出して。(あ、こいつ私が本気で叩いたら死ぬじゃん)って。でもさ、急には手を止めれないんだよね。
そのまま振り抜いて今に至る。
どうしよ……。
私がどうするか悩んでいると、奥から人が出てきた。
服装からして、冒険者ギルドの受付のお姉さんだと思う。
「何があったんですか!?」
ど、どどどどどうしよう。
考えがまとまらない。おかしいな、混乱耐性を持っているはずなのに混乱している。
も、もうどうにでもなれ!
「じつは、あのお兄さんたちに絡まれて……。
叩かれそうになったから、その手を避けたらあんなふうに吹っ飛んで行ったんです……」
その名も、萎れた態度をとる作戦!
雰囲気で可哀想な感じを醸し出し、受付嬢に自分の見方をしてもらう、という作戦だ!
周りにいた冒険者たちが、信じられないものを見るかのような目で見てくる。
やめてくれ、そんな目で見てくるのは。恥ずかしくて死にそうだ。
でも、受付嬢は私の言い分を信じてくれたらしい。まぁ、アイツらが勝手に吹っ飛んだんじゃなかったら、私くらいしか吹っ飛ばした人はいなくなる。でも、私って見た目は4歳の幼女だし?こんな小さくて細い腕であいつらを吹っ飛ばしたなんて、現場を見ていなかったら信じないだろう。
そのまま受付嬢は受付カウンターまで私を連れて行き、冒険者登録をしてくれることになった。
「まずあなたはFよ。そこからどんどんランクを上げていってね。本当は試験を受ければ飛び級できるんだけど、試験管によっては本当に危険だからやめておき―――」
「うけたいです!」
いいこと聞いちゃった。
どうやらこの世界にもランクの飛び級制度はあるらしい。
Fランクが魔獣を大量に売るのは変だと思われるけど、高ランクだったら何も思われないからね。なるべく高いランクになっておきたい。
受付嬢は受けるのをやめて欲しそうだったけど、私の熱意に負けて許可してくれ、
「優しい人と対戦できるようにするから。もし怖かったり無理だと思ったら降参って言ってね。そうしたら試験は終了だから」
と、試験会場に行くまでに何回も釘を刺してくれた。
大丈夫だよ、そんなことにはならない。
だって、私が試験官をボコボコにするんだから。