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恋人は謎多き冒険者  作者: 七夜かなた
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第1章ー7

堂々と「自分は冒険者だ」と言い張るフェル。

そんな訳はないとマリベルもわかっている。C級冒険者のフェルがその収入だけでクロステルのスイートに泊まれるわけがない。

でも、彼にも事情があるのだろう。そこに踏み込んで詮索するほどマリベルは彼と親しくはないし、彼女もその辺りは弁えている。


「そう言えば、フェルさんはそろそろ更新時期ですね」


彼が前回依頼をこなしたのは一ヶ月程前。父が亡くなる前だったことを思い出す。依頼を終えて無事C級のライセンスを維持してから、彼はいつものように街を出て行ってしまった。


「終わったらまた帰られるんですか」

「実は今回は暫くこの街にいようと思っている」

「その間もずっとここにいるんですか?」


いくらお金があってもここに滞在し続けるのは大変だろう。


「大丈夫。住むところは決まっているから」

「あ、そうなんですね。じゃあ、これからもよろしくお願いします。もし街での生活で困ったことがあったら、遠慮無く相談してください」

「ありがとう。あの、マリベルさん」

「はい?」

「えっと・・夕べの話・・」

「夕べ?」

「うん。俺は・・構わないから」

「?」


何が構わないんだろうと、マリベルは小首を傾げた。


「マリベルさんが望むなら、喜んで引き受けます。正直、うまくやれるか自信はありませんけど、精一杯勤めさせていただきますので、よろしくお願いします」


マリベルが話についていけないまま、フェルは勝手に自己完結していく。

話の内容から察するにマリベルが彼に何か頼み事をしたようだ。

ただ、それが何なのか、マリベルにはさっぱりわからない。

お酒は飲んでも飲まれるな。昔の人は良いことを言う。

父も泥酔の末に亡くなったわけだが、それについてはマリベルは納得していなかった。

父が自分からあんなに飲むはずはない。誰かに進められて飲んだか、もしくは無理矢理飲まされたか。

いずれにしても、最後に誰といたかはまだわかっていない。


「あの、フェルさん、申し訳ないんですけど…」


そう言いかけて、何かが脳裏に蘇った。


『そんな男、何なら俺が始末してやろうか』


誰かがそんなことを言っていた。それに対してマリベルは


『鼻を明かしてやりたい。こっちも恋人を作って、初めから彼はキープだった、本気じゃ無かったと言ってやるわ』


みたいなことを言ったような、言わなかったような。


『恋人?』

『ねえ、あなた、私の恋人になってよ』

『いいよ』


「あ・・・」


マリベルの顔からさーっと血の気が引いた。


「もしかして…恋人…」

「はい、不束者ですが、よろしくお願いします」


乙女のようにモジモジと恥ずかしそうにペコリと頭を下げる。


「ふ、不束者…」


それは嫁に来る方がよく言う台詞では?


「何でもします。掃除も洗濯も料理も得意です。裁縫は…今から勉強します。子育ては経験がありませんが、一緒に頑張りましょう」

「こ、子育て…」

「はい」

「そ、それは…今は必要…ないかも」


またもや一人で先々と妄想を走らせていく。どこから突っ込むべきか。


「そうですね。俺ってば気が早すぎ」

「じゃなくて、その…こ、恋人…」


今更あれはお酒の勢いで言ったことだとはいいづらい。

しかしここではっきり言わないと、後々とんでもないことになりそうな予感がした。

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