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恋人は謎多き冒険者  作者: 七夜かなた
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第3章ー11

「マリベルさん」


仕事を終えてプリシラがまた待ち伏せしていないか気にしながらギルドを出ると、フェルが声をかけてきた。


「フェルさん、どうして」

「今日は他の用事があって、今終わったところなんです。それで…マリベルさんと帰ろうと」


彼のことを考えていたら、彼が待っていてくれて驚いた。


「あの、わたしも話があって、取り敢えず、お夕飯、一緒にどうですか? 買い物もしないと」

「はい、喜んで」


今日で三日続けて彼と夕食を共にするなと思いながら、喜んでくれることに満更でもない気持ちになった。


(どうしよう。彼に伝えないと…でも一度は断って、またお願いして、すぐにやっぱりもう必要がなくなったから、関係は解消しよう。なんて、わたし、彼を都合よく振り回し過ぎだわ)


「そう言えば、エミリオ、亡くなったんです。昨夜」

「…昨夜?」

「はい。しかも遺体は真っ黒焦げで。事故か魔物の仕業か殺人か、まだはっきりしないんですけど」

「黒焦げで、彼だとわかったんですか?」

「副ギルド長が、確認しました。冒険者は初期登録の時に自分の髪の毛とか爪を提供していますから、それを特殊な魔道具を使って、遺体の一部と測定すれば同一人物かどうかわかります」

「ああ、知っています。『判別器』ですね。騎士団などでもあります」

「騎士団? もしかして、王都の国家魔導騎士団ですか? 」


死亡率の高い危険な職種の組織では、悪くすれば今回のエミリオのように顔などで本人かどうかわからない場合や、遺体の一部だけが遺される場合がある。

そんな時、魔導具師が開発した『判定器』で、本人の登録した体の一部。多くは髪の毛や爪などで照合する。

もちろん、騎士団にもあるだろう。


「どうして騎士団なんです?」

「あ、いえ、知りあい…が」

「お知り合い? あ、もしかして、クロステルを紹介してくれた人ですか?」

「え、あ、はい」


フェルが頷いた。


「騎士団の方とお知り合いなんですか」


あの豪華な部屋を知人が紹介してくれたとフェルは言った。

どんな知人かと思ったが、騎士団の人なら頷ける。


「ま、まあ…知り合い…そう、亡くなった養父の…」


一介の冒険者の彼にそんな知り合いがいたとは、ますますフェルはただの冒険者ではないと確信する。

国家魔導騎士団はその名のごとく、国の機関である。

家柄よりも実力重視、魔法と剣技の両方に秀でた者でなければ登用されない。

別名「黒龍騎士団」

なぜそう呼ばれているかと言えば、騎士団を率いる団長が纏う鎧が黒いかららしい。


「その鎧というのが、物凄い魔力がないと着られなくて、鎧が着る人を選ぶんだって。だからそれを着て戦えるだけでかなりの実力者だって、父が言っていました。昔、冒険者をしている時に一緒に仕事をしたことがあるそうです。年齢は同じくらいだったそうですけど、自分は全く足元にも及ばなかったって」

「俺も尊敬している。でも、同じくらい君のお父様も、尊敬している」

「あ、ありがとうございます。でも流石にそんな人と同列にされたと知ったら、父がびっくりしてしまいます」


マリベルの父も現役時代の実力はかなりのものだったらしいが、国のトップの実力を誇る人と肩を並べられるほどではない。


「フェルさんも騎士団を目指してたんですか?」


フェルも騎士団に入れるくらいの実力がありそうだが、そこは国家魔導騎士団なので、なかなか入れるものではない。

入ろうとして騎士団に入れなくて冒険者になったのかも知れないと思った。

それなら色々納得できる。けれど、彼の実力でも入れないなら騎士団入団はかなりの狭き門なのかもしれない。


「いや、別に…」

「大丈夫です。騎士団に憧れる人はたくさんいますけど、皆が皆入れるわけではありません。たとえ失敗しても、目指す方向さえ見失わなければ、職業がどんなだったとしても、フェルさんはフェルさんです」

「あ、ありがと…う」


余計なお世話だったかなと、マリベルは思ったが、彼女の励ましにフェルが微笑んでお礼を言った。


「それで、犯人が見つからないうちは、無闇に夜出歩いたり、人気のない所に足を踏み入れたりしないようにって、ギルド長が言っていました」


話は逸れだが、その日の夕食は魚介にしようと、材料を買い込んで二人でアパートに帰りながら、マリベルがギルドでのことを話した。


「マリベルさんの送迎なら、俺がしますよ」


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