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恋人は謎多き冒険者  作者: 七夜かなた
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第3章ー8

(あれ? 私、いつの間に寝ちゃったんだろう)


気がつくと朝になっていて、マリベルは自分の寝台で目を覚ました。


(えっと…確か、フェルさんとご飯を食べて、それから…)


彼とのキスを思い出して一気に体温が上がった。


(そうだ、私、フェルさんと…でも、その後どうしたっけ…)


彼の腕に包み込むように抱かれて、彼も自分と同じくらいドキドキしていたのを感じた。

でもそれからどうなったか覚えていない。


(え、まさか、寝落ち? そんな子供みたいなことある?)


しかし、いくら考えてもキスから後の記憶がない。そこだけスッポリ抜け落ちたようだ。


(それとも…気絶しちゃった?)


それほど彼とのキスが気持ち良かった記憶はある。

唇から伝わる彼の熱が全身に拡がり、足の先まで痺れるような快感だった。

それはまるで、彼に新たな命を吹き込まれているような、何とも形容し難い感覚。


(あんなの初めて…)


不器用さは否めないのに、なぜか心に響く。マリベルは彼とのキスを思い出し、唇にそっと手を当てた。


(もっとしたいと思うなんて、私って実は淫乱?)


しかも、キス以上のことも期待してしまっている。


「あ、急がなくちゃ」


起きて仕事に行く支度をするため、寝台から急いで降りた。


「あれ、何だか体が軽い」


医務室で仕事をした日の次の日は、魔力を使ったせいか体が少し怠いと感じた。しかも昨日はいつもよりたくさん治療したので、軽く魔力不足を覚悟していたのに。

今朝はいつも以上に軽やかだった。


「何でかな…」


自分の魔力量が増えたのだろうか。測定器がないためわからないが、レベルが上がるほどの経験値は積めていないはずだ。

考えられるのは、フェルとのキスだ。

彼とのキスで、彼の魔力が彼女に流れ込んだとも考えられる。


(でも、他人の魔力なんて合う合わないがあるから、簡単には交換しあえない筈なのに…)


枯渇するまで魔力を使い切っているならいざ知らず、自分の魔力が残っている中で他人の魔力が混ざれば、そこに違和感を感じるはず。それぞれ魔力には個人の色というものがあるからだ。

人を呼んでおいて、キスまでしたのに寝落ちなんて、申し訳なかった。怒っていないだろうかと思いながら、急いで着替えてフェルの借りている部屋の扉を叩いたが、二度呼びかけても中から返事はなかった。


(出かけちゃったのかな)


会って呆れられた顔をされたらどうしようかと思っていたが、いないとなるとそれはそれで残念に思う。

こんな朝早くからどこへ行ったのかなと思いながら、マリベルはギルドへと向かった。


「ちょっと、マリベル! どういうことよ」


あと少しでギルドに着くというところで、マリベルはプリシラに待ち伏せされた。

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