1.どのようにして旅に出たか
突然だか、俺は転生者だ。20年前にこの世界に産み落とされた日から今日まで色々なことがあったが、なんやかんやあって今は旅人をしている。素人が遠出すれば簡単に死ねるくらいには、旅は過酷なものだ。安全安心な現代日本とは違う。道端で野垂れ死んでいる旅人の亡骸を何度も見た。
それなら何故、怠け者な俺が旅に出たのかというと、それは俺がバチクソ強いからだ。
なんてったって子供の頃には神童と呼ばれていたし、今だって史上最年少の最高ランク冒険者として名を馳せている。この体の性能は凄まじく、同じ人間とは思えないくらいだ。素の力だけでも化け物級だが、魔法を使うとさらに凄まじい。具体的に言うと、雑巾を絞る感覚で人体を捻じ切る事ができる。正直吐いた。
しかし、俺にはひとつ大きな不満がある………………それは、俺が童貞であるということだ。前世ではモテない陰キャ社会人として生きてきた俺は、今世では前世の記憶を生かして女の子にモテモテなイケメン男子になってやるって、今度こそモテ男として暮らせると思ってたのに……………なんでなんだよ……
なんで俺は女なんだぁぁぁぁああ!!!!!!!!!!
そう、俺は女として生を受けてしまったのである!これで俺は永遠に童貞だ。やった!これで俺は魔法使いだ、夢にまで見た魔法少女だね! 馬鹿が。
しかし!それでも女の子として可愛い子とイチャつくことは出来る!そう思ったのだが、
「もう!シャーリーなんて嫌い!!どっか行ってよ!!!」
幼なじみに嫌われた。理由は分からん。
まぁ、そうして幼なじみと疎遠になって2年が過ぎて、俺は14歳になった。女子の体は成長が早いこともあり、身体能力的には既に今と余り変わらない。まぁ、つまり、俺は故郷の村の中で、1番強くなっていた。まぁ相変わらず幼なじみには避けられていたけど。村のみんなは俺の事を、村の希望だの、神童だの言ってたけど、結局俺はそんなのどうでも良かった。ただ、幼なじみとイチャイチャできれば。
そして、行き詰まっていた俺に転機が訪れる。魔族が襲撃してきたのだ。なんでも魔王軍の幹部らしく、魔王様復活とか言ってた。人類滅殺の第一歩として、辺境のこの村を襲いに来たらしい。ここで幹部を華麗に撃退すれば幼なじみから惚れられるんじゃね?と思い、果敢にも幹部に戦いを挑んだが、たかだか14歳の娘にはどうすることもできず、瀕死まで追い込まれた。
しかし、村の皆を逃がす時間は稼いだし、俺にしてはよくやった方だと思う。
幹部がなんかエグイ魔法を詠唱し、ここまでかというところで、雷が落ちた。いや、実際には落ちてはいないのだが。例えるなら、神の裁き。もしくは、大地の怒り。そういった神格的なもの。強烈な光魔法だった。どこからか驀進してきた光は、魔王軍の幹部を名乗っていた魔物を跡形もなく消し去った。
どうやら勇者が駆けつけて来たくれたらしい。実を言うと、雷が落ちた時点でほぼほぼ意識はなかったし、俺が起きる前に勇者は行ってしまったので、肝心のことはなにも知らない。1番近くにいたのにね。
勇者が俺のことを褒めてくれていたらしく、村を救った幼き英雄として、俺は賞賛された。が、幼なじみはその場におらず、ついに仲直りは出来なかった。
幹部との戦いを超え、俺はより強さを求め、というのは建前で、可愛い女の子を求め、中央といわれる、この国の首都に行くことにした。そこで冒険者として名を馳せ、名声と金を手に入れ、かわいい女の子を侍らすんだと意気込んで。不純な動機で数年働いたが、ついに女の子を侍らすことは叶わなかった。
そして今、俺は悟った。女の子を自分のものにしたいとは、どんなに愚かなことか。女の子は尊い存在なのだ。それを私物化するなど、なんと罪深いことか。
そういうことで俺は旅に出た。世界のかわいい女の子を見て回っている。
旅を始めて2年、ついに、ついに俺は出会ったのだ。
この世界の救世主、天使に。
「…………なにか御用でしょうか?」
「こんにちはミーシャ、今日もかわいいね!」