5.狂剣は、今日も変わらず。
「な、なんだ貴様は! ――もしや、貴様が【狂剣】!?」
「…………」
ゴルドルフは、部屋の中に入ってきた強面の男に戦いていた。
自身より大柄なその者の威圧感。筋骨隆々で、丸太のような腕や脚。手に持った剣は両手剣であるが、しかし狂剣は片手で振るってみせた。
無言のまま迫りくるアルフレッドに、頭取は震え上がるのだ。
「き、貴様の目的はなんだ! 金か、金なら……!」
「金など、私はいらない(だって、あの子たちの将来のためですもの!)」
「なっ……!?」
藁にも縋る思いで交渉するが、空振りに終わる。
まるで狂剣の思惑が分からずに、ただただ恐怖するゴルドルフ。ついには尻餅をついて、後退りを始めた。
「き、貴様は……!」
「私の目的は、ただ一つ……」
しかし、壁際に追い込まれる。
そんな彼に、アルフレッドは鋭い眼光を向けつつ告げた。
「いいか、私の目的は――」
◆◇◆
「お父様! お話があります!!」
「アルフレッドさん――って、あれ?」
遅れて、ゴルドルフの部屋に飛び込んできたマオとエリナ。
しかし彼らが目にしたのは、意外な光景だった。
「誰も、いない……?」
そこにはエリナの父も、アルフレッドもいなかった。
しかし、何かが小刻みに震えている気配はある。
「えっと、そこにいるのは……」
「お父、様……?」
よく探してみた結果、ゴルドルフを発見する二人。
「死にたくない死にたくない死にたくない」
めちゃくちゃ震えるゴルドルフを。
マオとエリナは目を合わせて、揃って首を傾げるのだった。
◆◇◆
「(はぁ……。緊張したなぁ、エリナちゃんのパパを説得するの。幸い素直に言うとおりにしてくれるって、約束してくれたから良かったけど!)」
夜の街を歩きながら。
アルフレッドは先ほどまでの喧騒を思い返していた。
「(見逃す条件として、あの二人のお願いをなんでも聞くこと、っていうのはアリだったのかな? ――大丈夫だよね。少なくとも、犯罪に手を染めるような子たちじゃないし! それにこれで、きっとあの子たちは――)」
その先を想像して、思わずにやける狂剣。
すれ違う人々はその邪悪な笑いに、驚き腰を引いていた。
「(とりあえず、一件落着! 私、頑張ったよね!)」
そんな周囲の視線など気にせず、気の抜けたアルフレッドはこう口にする。
「よぉし! 今日は奮発して、イチゴパフェ食べて帰ろっと!!」
鼻歌交じりに、スキップしながら。
王都には【狂剣】と名高い冒険者がいる。
しかしその者が、誰よりもピュアで純粋な心の持ち主だと、知る者は少ない。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
……というか、ここでいったん完結です。
時間あったら、数話完結で続きを出していきたいかな、と。
そんな息抜きの小話にお付き合いいただき、誠にありがとうでした!!
<(_ _)>