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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第1章―目覚め―
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7.ピーナッツの背比べ

 まったく、なんでこんなことになったんだろう。

 僕はそう思いながら、今日の昼のことを思い返してみることにした。


 長い入隊式が終わり、これから街を守る勇者になったんだ。そんなことを考え、浮かれていたときに『そいつら』は話しかけてきた。

「お前がスタンか?」

「お前がスタンって奴なのかい?」

 声を揃えて、さっき僕の噂話をしてたいやーな奴らが話しかけてきたんだ。

「な、何の用さ」動揺して僕は答える。

「お前のおかげでさぁ、俺らがビリコンにならなくって感謝してるんだな」

「そうなんだよ、あの試験ビリコンになりそうだったから不安だったんだよね」二人は順番に答える。

「ビリコン?なんだそれ、専門用語?」慣れない言葉に戸惑う僕。

「そんなわけねーだろ!ビリコンビの略なんですけどぉ!頭かてぇんだなやっぱ!」片方のチャラけた方が答える。

 そ、それって誉められてるのかな……?

「で、結局用は何なの?」と尋ねると、

「お前みたいな落ちこぼれには、お稽古してあげる必要があるんですよね〜」

「そうそう、落ちこぼれのピーナッツ野郎だからね」

 と答えた。

「どういう稽古さ」

「どっちが先に倒れるか、倒れるまで斬りあうのみ!」彼の持つ輝かしい剣を見ながら、チャラけた方が答える。

「それこそブレイバー!」比較的落ち着いてる方がさらに答える。

「勝手に武器使っちゃだめだよ!」

 そうだ。こんな剣でも一応、人肌に触れたら切れる。無駄な暴力をしないって約束じゃないか。自分の剣を見ながら思う。

「お前やっぱ頭固いなピーナッツ」チャラいのが言う。

「固くないよ!というかピーナッツは余計でしょ!」僕は半分キレかけていた。

「おやおや、そこまで言うなら俺に勝てるんですか?」挑発的にチャラけたのは答える。

「君らみたいな奴には負けたくないね!」思わず口に出してしまう。

「じゃあ勝負乗るか?」

「いいとも! まとめて来いよ!」

 そう言った瞬間、僕はハッとした。なんてことを言ってしまったのだろうか。取り返しがつかない。

 体も口も凍りついたままの僕に二人は答える。

「じゃあ今日の夜に大会場に来い。ボコボコにしてやるからな」

「ふふっ、楽しみだね」


 二人はエクセル、そしてワイヤーと名乗り去っていった。チャラけた方がエクセル、落ち着いたほうがワイヤーだ。

 この後僕は、寮の部屋のカギを受け取ってから、部屋を放置し、カギを置きっぱなしにして外に出た。

 本来の訓練は明日からだったので、都合がよかった。

 まだ同じ部屋の人に会ってないけど、僕は夜まで寮には戻らなかった。

 ずっと、剣術を磨くのに専念することにした。

 2人とケンカすることになる、しかも危険だ。


 無駄な暴力はしない。平和を象徴する我々が、絶対にやってはならないこと――


 レックスさんの言葉が脳裏をよぎるも、目の前にある現実を見て、必死にイメージトレーニングを重ねる。

 相手が走って来た。対する斬りは前に横に。足元をとらえ、体で相手を抑えて刃を突きつける。

 ぼくの勝ちだね。もう懲りたかい?――じゃない。相手は2人だ。こんなんじゃだめだ……

 その時、2人はやってきた。


「おいおい、随分早いじゃねーか」


「そんなに必死になったって無理だよ」


 本当は勝負なんてやだ。和解したい。けど無理だよ。

「まぁあれだけの大口叩く位だから、乗り気だよな!」

「決まってるよね!」

 まるで余裕をかまして彼らは言う。

 嫌気が差してきて、僕は言った。

「ねぇ、やっぱりやめようよ」

 反応は当然のものだった。

「はぁ? お前があんだけ言ったから来てやったのに、もう逃げ腰ですかぁ?」エクセルが首を前に出して言う。

「ダメに決まってるじゃないか。僕らも楽しみにしてたんだよ。君みたいな奴をボコすのをね」ワイヤーは笑みを浮かべ、静かな声でそう言う。

「やめようよ!レックスさんの言葉が聞こえなかったの!?」

「聞こえてたよ。これはあくまで稽古だよ」

「そうそう稽古なんだよなこれが」

「もう聞いてくれないのか……」


「なぁワイヤー、もうコイツボコしていい?」

「いいんじゃない? もうやるか?」

「おっしゃ! そうと決まればやってやるぞぉ!」


 その会話をした後、彼らは綺麗な剣を取り出し、突然僕のもとに全速力で走ってきた。

 もう僕ボコされるのか。そう思い僕はボロい剣を構える。自分からは手を出さない。出したくない。


 勝負は、意外な方向に向かっていった。

 2人が、こけた。

 あまりの勢いにこけた。


 2人がまとめて、重なってこけてくれたので、僕はそれを押さえにいく。

 ひょっとしたら、勝てる?そう思いながら、片足で2人を押さえつけ、剣の刃先を首に突きつけた。刺す気も斬る気も満更ない。ただの脅しだ。

 僕は、「もう、やめようよ、おし、まい、に、しよう、よ」自然と震えた声で言う。

 2人に答えが無い。うつ伏せのまま、こちらを向こうとしない。

 ぼくはあれっと思い、剣をしまって顔を見る。

 二人は、完璧気絶してた。

 ビビってたのは、実は向こう側もだったのか。


 僕は二人をかかえ、寮に向かった。

 彼らはどこの部屋なのか。ポケットに入ってた紙を確認し、部屋の番号を確かめる。

36番と書いてあった。

 何か見覚えがある気もしながら、その部屋に向かった。

 その部屋は、僕が昼に放置した部屋そのものだった。

 2人をベットに横たわらせ、介抱することにした。

 下手に治療するよりも、放って置いた方がいい。

 そして、窓を開け、空気の循環をよくしようとした。


 瞬間、大きなサイレン音が流れた。警報だ。出動、もしくは非難の合図。驚いて外を見ると、そこには信じがたい光景が姿を現した。


 朝の夢が、こんな形で正夢になるとは思っていなかった。

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