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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第1章―目覚め―
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6.黒い刺客

「シルク、行くぞ」

 そう短く、レックスは言った。

 入隊式が終わり、早急に看守に話を聞く必要がある。すぐにこのホールを出なくてはならない。

「行くってどこに?生きてる看守さんはウェア ヒー イズ?」シルクは問い返す。

「Where is he だろーが、英語ぐらいちゃんとしてくれ」とレックスは言うと、

「今のはジョークよ。真面目に返さないで」と、つまらなそうに返された。

「逆ギレすんなよ、そうゆうの俺苦手なの知ってるだろ」レックスは多少面倒そうに言った。

「話逸らさないでよ」とシルクは怒る。

 逸らしたのは彼女なのだが、レックスはもう構うことなく、

「今から、シュテンハイムの病院に向かう」と言う。

「あぁ、あそこの駅前の病院? 大きいのよねぇ、研修生の時行ってビックリしたもんよ」思い出す限り、嬉しそうにシルクは語る。

「とりあえず、歩きながら話そう。時間がない。」

「止血が間に合っただけで、今は大丈夫なんじゃないの?そこまで急ぐ必要も……」

「一番急ぐ必要があるのはお前だ。治療できんのお前だけなの」

「外傷はもう大丈夫なんじゃないの?」

「そうだけど、とにかく」

「じ、じゃあ、行きましょう」

 そう言い、組織のトップ2は門を出る。


 2人は、シュテンハイムの街を歩きながら、事件について話をしていた。

「今回の事件、1000年前の事件と酷似していることは確かだが、とくに関連性とかは見つかっていない」

「そりゃあ1000年前の大昔の事件なんて、語ってくれる人もいないしねぇ。事件データも多分警察の方が持ってるしね」

「だが、最近は警察の方もお手上げみたいだぜ。そしたら俺たちと関係があるんじゃないかって、マスコミが追求し始めた。全く、ネタが無いのかよ。あきあきしちゃうぜ」

「そうよね。でも、全然関係が無いワケじゃないのは事実だし、もっと調べなきゃね、事件のこと」

「ああ。それより、何か他に分かってることはないのか?」

「昨日の夜に、事件が関係あることを発見したから、まだ詳しいことは謎のままよ。第一、15年かけて未解決に終わった事件を、私たち二人だけで……」

「ああそうだ。だから、『被害者』に話を伺うんだよ」


 2人はシュテンハイム駅の前を通る。

 病院はすぐそこにあった。駅から殆ど歩かない距離にある。遠くから見ても分かるくらい、非常に大きな病院だった。

 2人は病院の自動ドアを開け、受付に向かった。

 病院はとても広かった。たくさんの椅子が並んでいて、いかにも苦しそうな人からマスクをしている人まで、ずらりと座っていた。

 受付に行ってまずレックスが、

「ブレイバー剣士隊長のレックスだ。刑務所役員の者と面会したい」と言うと、

「申し訳ございません。そちらの方はただいま面会謝絶でございます。」と、受付の若い女性に言われた。

「おい、話が違うぞ。俺は呼ばれて来たんだぞ」レックスは多少怒った口調で言うと、

「そうおっしゃわれましても……」困ったような口で受付が答える。

 そこで後ろにいたシルクが割り込んで、

「ブレイバー医療隊長、シルクです。医師免許はちゃんと持ってます。カウンセラー免許も」と言うと、

「貴方がシルク様でしたか、お会いできて光栄です。では2階の部屋にどうぞ」とあっさり言われた。

「それと、この人も関係者なんです。回りくどい言い方して誤解招いたようですが」シルクはレックスを指差してそう言った。

「関係者の方だったのですか。それは大変失礼しました」受付の人がそう誤ると、

「ああ、大変に失礼だった」レックスは不機嫌そうにそう答えた。


 病室のドアを開けると、目の前に人が仁王立ちしていた。

「関係者以外は、入れないはずだが」男はそういった。

「はぁ……。みんな俺の顔を知らないのか」レックスは悲しそうにそう言い、

「ブレイバー剣士隊長のレックス。ここに呼ばれてきた」

 彼は身分証を取り出した。

 すると男は態度を変え、驚いたかのように、

「……! これはしつりぇいしました! けんしたいちょう!」と、あわてて答えた。


 男は警官だった。名前は杉野と言うらしく、殺人課に勤めているらしい。

 よく見ると、意外と優男で、気も弱そうだった。強がったときの迫力は結構なものだから、自身もてばいいのにとレックスは思った。

 杉野は小声で、

「病室の奥にいる看守は、精神的にかなり不安定です。私も取調べしようと思ったのですが、事件のことを言うだけでわめき出す、よほどのショックを受けています。面会は慎重にお願いします」

 と言った。

「そのことは聞いている。もちろん慎重にするさ」レックスは答えた。


 看守は、ベットから上半身を起こした状態で病室にいた。

 かなり表情はやつれていて、誰とも話す気分ではないような状態だった。

 胸には包帯が巻かれ、血が滲み出ていた。

「レックス、ちょっと私にやらせて」シルクはそう囁いて、まず1人でベッドに歩いていった。

「お怪我のほうは大丈夫ですか?」シルクは始めにそう聞いた。

「はい」看守は静かにそう答えた。

「何か食べた?」

「リンゴを少々いただきました……」

「じゃあ、痛いところは他にあります?」

「……正直、全身痛いです……」

「当日、何があったか話せる?」

「……話せないです、やめてください……」

「お願い、あなたが限りなの」

「いやだ……やめてください……」

 シルクは驚くことに、話の流れを無視して質問し始めた。

「教えて欲しいの。話してくれませんか? ……どんな容貌でしたか?」

 そう言った瞬間、聞かれたくなかったかのように看守は大声を上げる。

「うわああああぁぁぁぁぁっ! 刺客がぁっ! 黒い刺客がああぁっ!」

「お、落ち着いて! ごめんなさい、いきなり変なこと聞いてしまって!」

「黒い刺客……?」

 レックスは怪訝そうに言った。

 杉野は、事件の詳細について語った。

「はい。今回の刑務所での大量殺人事件。目撃者である彼の証言によると、真っ黒な姿をした生物が、大きな爪で看守を引き裂いたと言うのです。幸い彼だけ傷が浅く、処置が間に合ったのですが……カウンセリングが必要ということで、シルク様をお呼びしたのです」

「おい、『真っ黒な姿をした大きな爪を持つ生物』って言うが、そんなの考えられるか?」

「わたくしも信じがたいのですが……解剖によりますと、傷口には爪で引き裂かれたような跡が確かにありましたが、他の動物の爪とは一致せず、刃物によってできたものとは考えにくいそうで」

 レックスは心当たりがあるかのように、大声を上げている看守に対して、

「おい看守、翼とかは生えてるの見たか?」と言うと、

 看守は、急な発言に驚いたようで、おとなしくなって、

「……どうしてそのことを?」と言った。

「いや、俺の勘だ。やはりそうだったか」レックスがそう言うと、

「心当たりがあるのですか?」杉野は疑問を持つ。

「ああ。信じられんが、今までばかにされてきたブレイバーの『存在意義』が、ついに現れようとはな……」

「どういうことですか……?」杉野はまだ分からないようでさらに質問する。

 シルクは感付いたのか、目を見開き、

「うそ……! そんな、悪魔……!?」とつぶやいた。

 その会話を聞いて看守は、

「悪魔――殺される! うわあぁっ! 殺されるんだぁっ!」そう再び大声を上げた。

「残念だけどキリが無いわ。もう少し安静にさせといたほうがいいわね」シルクはそう言った。

「お前ダメダメカウンセラーだな本当に・・・免許取ってんのかよ」レックスは悲しそうに言った。

「下手にカウンセリングするよりも、放って置いた方がいいのよ」シルクはそう話す。


 そんなとき、病室のドアをノックする音が聞こえた。

「レックス様。マイノリティ大会ゲスト参加希望者のまとめができました」という声がしたので、

 レックスはドアを開けた。

「おい、よくここまで来れたな大会管理委員。俺なんか身分証見せても入れなかったぞ」レックスは不思議そうに言うと、

「シルク様の関係者ですと申し上げてから身分証を提示したらOKでした」と管理委員は答えた。

「それで、こちらが参加者まとめです。」

 レックスはマジョリティに参加するので、あまり興味がわかなかったが、一応許可を取る必要がある。

 紙に印刷されたその名簿を見ていく。

 すると、見たことのある名前があった。

「おい管理委員。この名前はマジョリティのゲスト参加ではないのか?」

「どちらですか?……えー、こちらの方は何度も確認をとりました。これで確かです」

 レックスは納得がいかなかった。どうしてこんな人の名前があるのか。


「ミッチェル社長が出場?」


 ピース街に帰るまで、終始考えていた。

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