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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第5章―力の覚醒―
37/37

37.革新-スタン

「くだらん……」

レックスは剣を背負い、歩いていた。資料室にまで続く廊下は、今日に限っては長く感じた。

彼が嘆いていた理由は、教え子らの心の弱さであった。自分が戦いを学ぶ頃にはあの程度の弱みはなくなっていたのだが、彼らの場合は違った。むしろ面倒そうな心情でいる者もいた。レックスはそれが嫌で、彼らに「闘いの業」を授けるのを断った。

しかしこのままではいけないことは、彼も充分に承知していた。

当然だ、今は緊急事態と言っても良いような状態である。彼らの知られざる存在―BMPや悪魔といった奴らが出てきたのだから。

「選ぶとしたら、一人か……」

彼には全ての者に平等に、自分の業を教える気がしなかった。むしろ、彼の業すべてを習得することが出来る人間が、そう簡単に出てくるとは思えなかった。

「レックスさん!」

そんなことを考えて、歩いていたときである。彼を呼ぶ声がした。

その声の主は、あの金髪の少年、スタン・ハーライトであった。

彼は足早にレックスの元へ向かった。

「貴様か。何の用だ」

レックスは少年の顔を見た。走ってきたからか、表情には疲れが見えた。

彼はその時、シルクに言われていたことを思い出した。『心』の存在である。

シルクが言うには「半分のような、一人分のような」心の持ち主らしい。

彼はスタンの目を見た。

確かに彼女の言うとおりであった。彼は今まで見たことのない、不思議な感覚を覚えた。

(これはひょっとして、あの時と関係があるのだろうか)彼は初めに本部に悪魔らが攻めて来た時の、彼の不敵な笑みとあざ笑うかの如き口調を思い出した。

「僕、我慢できずに追いかけて来てしまいました!」

スタンは言った。

「ほう、何故だ」

「それは、その……」彼は表情を曇らせる。

「じ、実はその、僕、憧れを持っているんです」

「憧れ?」

はっきりとしないスタンに苛立ちつつも、レックスは聞いた。

「はい。それは……」

そして彼は顔を上げて、はっきりと申し上げた。


「あなたのような剣士隊長になることなんです!」


「俺みたいな、か?」

彼は驚いた。

「勿論です!だから僕、今日とても楽しみにしていたんです! でも、さっきの件で……」

「貴様らでは俺が業を授ける価値が無いと踏んだ。だからだ」

スタンは再び表情を曇らせた。

「どうにか、なりませんか?」

「どうにもこうにも、貴様らの責任だ」

「……僕、諦めたくないです」

「何?」

「あんな化け物達が出てきているんです! このままじゃぁ僕でも勝てない奴らが出てくるはずです! 今の僕では無理なんです! 絶対に、絶対に闘いを諦めたくないんです! 貴方様のもとで、業を……」

「それ以上喋るな。耳障りだ」

「うぅ……」

彼らはお互いにゆるぎない心を持ち、譲ることは無かった。

レックスは一考した。


この少年には何か秘密がある。


長年の経験からなのか、彼はこの少年に少し興味がわいた。


「スタンよ」

「はい!」


「俺のは、厳しいがかまわないか?」


「……はい!!」

スタンは明るい表情で答えた。


大会までの、それぞれの修行が始まった。

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