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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第5章―力の覚醒―
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35.革新―エクセル

「はぁーっ」


 エクセルはベットの上で横になりながら、ため息をついた。顔は真上を向いている。

 天井を見上げても小さな電灯しかなく、なにも面白味がない。

 彼は天井を見てはいなかった。見据えていたのは、『これからゆく道』であった。

「強い心かぁ。俺は相手に勇敢に立ち向かうことが勇気だとばっかり思ってた。でもそれは、自分に『力』がなければ『勇気』というものは『無謀』に変わる。そんな簡単なことが、分からなかったというのか?」

 彼はこの誰もいない部屋で、自分自身に問いかける。

「俺にはまだ力が足りないのか? アイツの言ったとおり、俺は馬鹿だったのか?」

 ベッドから起き上がる。そして己の手のひらに視線を落とす。

「非力な上、魔術も使えない。そして勇気がない。最低だ……」

 そして再びため息をついた。


「そんなことねーよ」


 ドアの向こうから声が聞こえた。


「だ、誰だ!?」

 そしてドアを開け、知らない男が入ってきた。

 上半身はジャケット1枚。腕には包帯をしているものの、鍛えられた筋肉が伺える。茶髪をボサボサに生やした、日系の男だった。

「驚かせてごめんよ。通りかかったら"心の揺れ"を感じたんだ。近づいてみたらこれだったからな」

 男は笑い、髪を掻いた。

「だから、誰だって聞いてるんだよ。ブレイバーの格好してないし、不審者にもほどがあるだろ」

「ははは、そうだな。俺は天竜鳶人っていうんだ」

「アマノタツ?変な名前だな。んで、アンタは何者だ?」

「え? うーむ……」

 鳶人は少し困った顔をした。

「"元"ブレイバー、と言ったところか。敵じゃないから安心しな」

「で、何の用だよ?」


「お前に気づいていない事を教えに来た」


「気づいてないこと?」

 エクセルは首をかしげた。

「ああ。お前は今、才能が無いと思っているんだろう?」

「……!?」

 才能。下っ端であり、誰にも勝てていない。そんな彼は、自分の「才能の無さ」はひどく痛感していた。

「……馬鹿にしてるのか?」

「今のお前は弱い。それはとてもとても……腕も立たず、頭脳も冴えず、精神も脆く、すべてが弱い」

「何なんだよ……さっきから」

 エクセルはベッドから立ち上がった。


「えらそーに俺に口だすんじゃねーっつぅの!」

 拳を握り締め、鳶人の顔面めがけて突き出した。


 その拳はいとも簡単に、片手で受け止められた。


 エクセルは自分の拳にかかる重みを感じた。

「ぐううーっ!」

「痛いだろ?これが今のお前の弱さだ、おらっ」

 鳶人は掴んでいた手を離し、軽くエクセルの体を突いた。

 エクセルはベッドに倒れこんだ。


「うっ……なんて弱いんだ、俺は」

「そうだ、それが"今の"お前」

「……今の?」

 鳶人の顔を見ようとしたとき、初めて自分が涙を流していることに気づいた。


「お前、レックスのような剣術は好みじゃないだろ」


「な……なんで分かったんだ!?」

「今こうして俺に飛び掛ってくるとき、クソ真面目な青二才だったら"この近距離でも"剣を抜いて戦っていた。拳を出すということは、戦闘知識に長けているか、自分の身体にそれなりの自信があるか……無論お前は後者だろうな」

 エクセルにとっては、涙が乾くような言葉だった。今まで分からなかった自分の正直な気持ちに、彼は一歩近づいたような気がした。

「俺は経験があんだよ経験が。自慢するとレックスと同じくらい」

「! レックスと……レックス様と?」

「そうさ、あいつと俺は友達だ。互いに戦いのプロだ」

「え……え? あんた……いや、あなたは俺の何なんですか?」

「なんでもない、ただ気になっただけさ。でもこうして話してみて分かった、お前はできる奴だ」

「へ?」

「これからお前に、俺の業を教えよう」

 鳶人はエクセルに拳を突き出した。


「そして……お前はマイノリティで、優勝する」

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