31.確信
「……間違いないわね」
ミッチェルは窓から外を見つめながら、そう言った。
外はさっきまで降っていた雨が、より激しくなっていた。
「あれは間違いなく……"鳥"ね」
彼女は深々と、考えていた。
スタン・ハーライトを、レックスに呼んでもらい、調べたが、彼女はそこである"確信"を持ったのだった。
「どうした?」
すると、彼女の後ろからすうっと長い髪の男が現れた。
「ジューン、いたの?」
「いや? 今来たところさ」
「……スタン・ハーライトは"鳥"だわ」
「ほう」
ジューンは関心無さそうに言った。
「どうしてそう思った?」
「この腕輪よ」
ミッチェルは右腕に付けてる黒い腕輪を彼に示した。
「腕輪?」
「これは"遺伝子"を感知することができるの」
「またディッセムのか?」
「ええ、ディッセムは良いものを作ってくれたわ。これを付けて、スタンの手を触ってみたんだけど、"鳥の遺伝子"が非常に濃かったの」
「ふーん、あんなマッドサイエンティストの作るものを信頼するんだなぁ」
「ええ、信頼してるわよ」
ミッチェルは当然だ、と言わんばかりの口調だった。
「だってさぁ、"鳥の遺伝子"を感知するって…やりかたがなんとも回りくどいよ。誤認の可能性は十分にあるだろ?」
「たとえば?」
「君らしくもない質問だね。外に鳥が飛んでたら、それを感知するかもじゃん?」
「外を御覧なさい」
「ん?」
ジューンは窓の方を向いた。
「……なぁるほど」
「でしょ?こんな雨の中、鳥が飛んでると思う?しかもここはビルの最上階よ?」
「アマノタツはいなかったのか?」
「来ていたのはスタン・ハーライトとレックスだけ」
ジューンは少し考えた。
「ふーん、これだけ条件がそろってれば問題なし……か」
「あいつは間違いなく……」
「ストロン、というわけか」
ミッチェルはうなずいた。
「何かあったの~?」
そして、スーツを着た女が部屋に入ってきた。
「ん? 誰だ、コイツ?」
「すぐに分かるわよ」
するとその女は急に姿形が不安定になり、やがて別の女性の姿になった。
「あぁ、エイプリルか」
「うふふ、ジューンでも分からないなら上出来ねアタシ」
エイプリルはクスクス笑った。
「で、どーしたのよ、ミッチェル?」
「ええ、ストロンの行方が分かったわ」
「あら、ストロンってほんとー?」
「本当よ。ディッセムのおかげで分かったの」
「へぇー」
「さて……そろそろ僕たちの"作戦"の準備が整ったようだ」
ジューンは得意げに髪をなびかせた。
「そうね」
「ヒヒヒッ、勇者ごっこはおしまいだね」
外では、雷が激しく轟いていた。