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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第4章―迫る脅威―
29/37

29,無休

「スタン、お前お使い行ってたんだって?」

 ワイヤーは僕に尋ねた。

「うん。シルクさんに、頼まれてさ」

 僕は曖昧に答えた。

「へぇ、どんな内容だったわけ?」

 エクセルは適当そうに言った。

「それは……言わないようにって」

「ちぇ」

「やっぱりダメか……」

「え?」

 ワイヤーの呟いた、ダメだったというのは、どういうことだろう。

「シルク様もああだしなぁ。昨日なんでいなかったのか聞いたけど、やっぱりダメだったんだよ。……なんだったかな、プレイベートが――」

「『女性のプライベートに関わると、痛い目見るわよ!』」

 エクセルが裏声で言った。

「そうそう! 似てるな、お前!」

 ワイヤーが笑いながら言った。僕も思わず笑ってしまった。


 僕たちはこうやって、いつも通りの会話を楽しみながら、廊下を歩いていた。

 僕が2日間ここを留守にしていて、何をしていたのかは誰もが気になるだろう。でも、隠密行動を心がけていたから、事が終わった後も話すわけにはいかない。

 鳶人さんが何者なのかということ、あの人がここに来ていることを知っている人は、今のところは殆どいない。

 ちなみに僕も、鳶人さんが一体どんな人なのかは知らない。あまり追求すると、何かがありそうだからやめておくけど。


 そんな時、目の前に久々に見る顔が現れた。

「あ、あれって」

「サイス……だな」

「……」

 エクセルは黙っていた。

「エクセル、どうしたの?」

「……」

「事情は後で説明するよ」

 ワイヤーが僕にひそひそと言った。


 正面から来るあの人は、サイスに間違いなかった。講義で……たしか、「心を感じない」とか言われてた、ちょっと悪い感じの人だ。

 髪の毛は逆立ち、目は尖らせ、闇を見るような黒い隊員服を着ている。顔立ちもすごい怖いし、なんだか強そうだった。

「あ!」

 僕は彼が近づいてくるにしたがって、もう一つ分かったことがあった。


 大きな武器を持っていた。あれは……鎌?


 鎌だ。それにしても大きい。刃だけでも、身の丈はいくぞ。

 そして大きく反り曲がった刃が、まるで血を求めているかのように、光っていた。

 サイスはそれを背負って歩いていた。こちらに向かってくる。


 ついに、僕の目の前に来た。そして、なぜかエクセルの正面に立った。

「……」

 エクセルは未だ、黙っている。

「いよいよ明日だな」

 サイスは高らかに言った。

「どうした、もう怖気付いたか?ま、せいぜい明日まで頑張ることだ! ケヒヒヒヒッ」

不気味な笑い声を上げながら、その場をさっさと通り過ぎてしまった。

 明日? 明日に一体、何があるんだ?

「実はだな……エクセルはあいつに、喧嘩売ったんだよ」

 ワイヤーが言った。

「ええっ!?」

「それで明日、大会場で戦おうって約束したんだよ。僕たちが入隊式の後、お前にやったことと同じさ」

「そんな……」

 また、無駄な暴力が起きてしまうのか。

 エクセルは依然、黙ったままだ。

「でも、前にやったことなのにどうしてまた……」

「それがだな……」


「スタン・ハーライト!」

 その時、僕を呼ぶ声がした。


「え……レックスさん?」


 今度はレックスさんが、僕のところへやってきた。

「スタン、お前を呼んでいる人がいるんだ」

「はい?」

 今回は、呼び出されることで、思い当たる節が無かった。

 まだ試験もやってないし、留守にしてたことは上層部の方から許可下りてるし……

 それにしても用件ばっかりで、僕には休みが……


「今晩、ミッチェルがお前を呼んでいるんだ」


「えーっ!?」

「だだ、大企業の社長の!?」


 僕たちはしばらく、開いた口が塞がらなかった。

 エクセルを除いて。

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