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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第3章―翼を持つ男―
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26.挨拶

「あぁ、なんで走らなくちゃいけないんですか!」

 僕は、鳶人さんを追って走っていた。

 昨日言われたとおり、僕たちは本部に帰ることにしたのだけど、まさか走ることになろうとは。

 息遣いが荒くなってきているのが分かった。なんせ、鳶人さんの住んでいた家から、ずっと走っているわけだからだ。


「はぁ、はぁ……はーっ、ようやく着いたーっ」

 そして僕は、ようやく本部の門にまでたどり着いたのだった。

「スタン君!」

「え?」

 前を見ると、シルクさんが走ってきていた。

 レックスさんも、一緒にいた。

 僕は、昨日までの状況を、報告することにした。

「ただいま戻りました。天竜 鳶人さまには、しっかりと手紙を渡してまいりました。」

「おかえり、お疲れ様!」

 シルクさんは、僕の肩に手を置いた。

「ご苦労だった」

 レックスさんも言った。

「はい、ありがとうございます。……あ、そういえば先日、シュテンハイムを経由して参ったのですが、その間に悪魔5体が襲撃に入りました。」

「ええ、そんなことがあったの!? なんですぐに言わないの!?」

 シルクさんは両手で僕を揺さぶった。

「あううあうあう、あ、あんみつ……じゃない、隠密行動を心がけたのですよー!」

「ねぇ、なんで!?」

「だ、だから、いってる、じゃない、ですか!」

 そして、揺さぶるのを止めてくれた。

「――スタン君、一人でやり遂げたんだって?すごいわよね」

「あれ、ご存知だったんですか?」

「私たちがこの件を把握していなかったはずがないわ。ただなぜ連絡を入れなかったのかが気になっただけ。ね、レックス?」

「ついさっき俺の口から聞いた割によく言うぜ」

 レックスさんはあきれた様子で言った。


「……あ、あれ?」

 シルクさんは急に、キョロキョロし始めた。

「どうかされましたか?」

「ねぇレックス、鳶人いなくない?」

「それは本気で言っているのか?」

「……まさか?」

「あ、あれ!?」

 そういえば、鳶人さんがいない。

 追っかけていったから、とっくに着いていると思っていたのに……


「来るぞ!」


「え!?」


 急に土煙が舞い上がった。


「うわっ!」


 僕は驚きのけぞった。


 土煙がおとなしくなって、前を見てみると……


 鳶人さんがいた。

 レックスさんに拳を向けている。


 レックスさんはその右拳を手で受け止めていた。


「その剣、使えよ」

「使うまでもない」


 ええ、一体どうなっているの!?


「はぁっ!」

 鳶人さんが、手を戻し、ジャンプして退いた。


 そしてそこで、両手を横に広げる。


「うわあっ!」

 すると、凄い勢いで風が舞い上がった。すごい勢いだ、立っていられるだけで精一杯だ!


 僕は必死で目を開ける。

「あ、あれ!?」


 鳶人さんの姿がなくなっていた。


 風がおさまり、見てみると……やっぱりいない。


「……」

 レックスさんは、微動だにしていなかった。

 あれだけの風を受け、表情も変えていなかったのだ。


 そして……


「レックスゥッ!」


「あっ!?」

 上だ! 上から、鳶人さんが拳を構えて、レックスさんのところへ向かっていた!


「レックスさん! うわぁっ!!」

 また風が吹き荒れた。すごい風だ。

 たまらず僕は、5メートルくらい後ろへ吹き飛ばされ、しりもちをついてしまった。


 なんとか起き上がり、前を見ると……


「……え?」


 2人が、拳を突き出しあっていた。

 2人の顔には、少し笑みが浮かんでいた。ような気がした。


「相も変わらず喧嘩っ早いな、お前は」

「ふん、力を惜しむのもどうかと思うがな」


 あれ、なんか仲良くなってる? よくわかんない、何が起きているんだ?


「あの2人は旧友よ」

 

 シルクさんが言った。

「旧友?友達なんですか?」

「そうよ。どちらかといえば"戦友"、かしらね」

「戦友ですか?」

「彼が『黒髪の狂乱者』と呼ばれたとき、彼と互角に渡り合った数少ない人物・・・それが鳶人らしいの」

 そんな。あのレックスさんと互角の実力だなんて…

「信じられないでしょう?挨拶があれらしいからね」

「あれ挨拶なんですか」

「アホよねぇ、ほんと男って」

 よく僕は殺されなかったな。

「さっきの見る限り、対立が予想されますけど……」

「戦力にはなってくれると思うわ。もっとも、性格があれじゃねぇ……」

「え?」

「すぐに分かるわよ。さて、先に中に入りましょう」

 なんだかシルクさんは急いでいる気がしたが、多分そんなことはないだろう。

「はい、分かりました。」

「ねえ、スタン君」

「はい?」

「……見た?さっきの風の時」

「え、何をですか?」

「なんでもない」


 彼女は足早に本部に戻っていった。

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