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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第3章―翼を持つ男―
24/37

24.驚愕

「はっ!!」


 気が付いた。

 よく森の中で気絶して、無事でいられたな、僕。

 普通だったらクマとかトラとか野犬とかに食べられちゃうイメージがあったんだけど。


 目の前が明るいってことは、もう朝か。

 任務が1日中で終わらなくて、まだ鳶人さんを探せてないから、どうしよう……

「ん?」

 僕はその明るさに変な感じを覚えた。


 天井があるのだ。これは日の光なんかじゃなくて、灯りだ。


 僕は驚いて、起き上がった。

 気がつけば僕はベッドの上で寝ていたらしい。

 僕が着ていた上着も、いつの間にか脱いでいて、そばに置いてあった。

 そして、さっき痛めた腹には、包帯が巻いてあった。

 剣は……あれ?


 剣がないぞ? 武器がないぞ?


 まずい。ここが誰の家か知らないけど、剣が無いと戦えないじゃないか。

 あんな錆びてる剣でも、なんだかんだでこんな時だけ頼るんだよな。

 ど、どこだ……どこにある?


「お、気がついたか」


 男の人の声がした。

「はっ、まずい!」

 僕はなんとかして立ち上がろうとしたが、腹部が痛んでだめだった。

「はは、俺は敵じゃないからな?」

 そう言い、男の人がドアを開けて部屋に入ってきた。


「飲みな」

 その人は急に、カップを僕に渡してきた。

 それはスープのようなものであった。僕は空腹と寒さで苦しかったので、何も考えずに飲んでしまった。

 味がちょっと薄かった。

 この人が悪い人じゃないことは、僕はこれで十分に分かった。

「怪我は平気か、少年?」

 その人は優しく問いかけた。

 茶髪の男の人で、背が高かった。ベスト1枚しか着てなく、両腕には包帯が巻かれていた。ズボンはすごくダボダボしたやつで、たしかニッカポッカといかいう名前だったはずだ。

「え、まぁ、大丈夫です……」

 僕は答えた。少し痛かったけど、このくらいは平気だ。ブレイバーだもの。

「なら良かった。ちょっと心の"流れ"を感じたものでね。外を調べてみたら、案の定お前さんがいたってわけ。治療もしてやって大変だったよ」

 心の流れ。そんな言葉を知ってるということは、この人も「魔術」を使えるに違いなかった。

 僕はありがとうございます、とお礼をした。しかし気になることがあった。


「そういえば……剣は、僕の剣は!」

「剣? あぁ、一応武器は預かっておいたよ。暴れだすと困るからな。家の大事なモン壊されたらシャレにならない」

 男の人は笑いながら言った。

「しっかしお前さん、いい武器持ってるじゃないか、え? あんな使いづらいものを」

「はぁ……?」

 いい武器。あんなに錆びてる武器をこの人は"いい武器"と言ったのだ。これには僕は驚きを隠せなかった。

「ど、どういったところがいいんですか……?あんな錆びたもの」

「えぇ? あはは、そうか知らなかったのか。あれは"熱流剣"といってだな、熱に強い合成金属を使っているんだ。主に"炎"を使った魔術で、"流れ"を行い易いように作られたんだ。だけど切れ味は良くないから、あまり使い勝手が良いとは言えない」

 買った当人の僕が知らない、武器に関する知識を持っている。この人何者だ?


「そういやお前さん、どうしてこの森にいたんだ?」

「ええと、ある方を探しに……あ!」


 僕はこの時、レックスさんの言っていたことを思い出した。

 茶髪の男性。森に住んでる。この人なのか?


「もしかして、あなたが天竜 鳶人様でいらっしゃいますか?」

「ん! ああ、そうだが?よく知ってるな。相当物好きだな」

よかった、これで安心した!

「実は……」

 僕は置いてあった上着から手紙を取り出した。

「これを……」

 そして、目の前にいる鳶人さんに渡そうとした。

「……」

 鳶人さんは、手を出そうとしなかった。


「俺は、受け取らんぞ」


「え?」

「俺は……外の世界との関係を絶った」

 関係を絶った? そんな……それだったらぁ、いままでの努力はなんだったんだ。

「どうせ、差出人はしょうもない奴だろう。帰ってきてくれとかなんとか。そんなんじゃ読んだって無駄だ、むーだ」

 鳶人さんはいきなり投げやりになった。

 でも何も読まないで破り捨てられたら困るし、なんとか説得しよう。

「それは差出人の方から、非常に大事な用件が書いてある手紙として受け取りました。そして僕は、ブレイバー本部からこちらの森に参りましたことにございます」

「……ブレイバーから?」

「はい、差出人はブレイバー、マジョリティ所属先陣剣士部隊隊長レックス様でございます」

「何!? レックスだと!」

 鳶人さんは、いきなり目の色を変えた。

 そしておもむろにその手紙を開いた。鳶人さんは急いで目を走らせた。

「……」

「……」

「な、なに……!?」

 鳶人さんは、驚いている様子だった。


「B…M…P…!?」


 BMP? 僕にはそう聞こえた。そんな言葉、聞いたことがなかった。おそらく気のせいだろう。

 鳶人さんは読み終えたようで、手紙を折りたたんで懐にしまった。


「少年!名前はなんと言う?」

 鳶人さんは聞いた。

「え? 僕はスタン・ハーライトです」

「スタンよ、手間をかけて悪いが……」

「は、はい……」


「本部に行く。明日、出発する」


「は、はぁ……」

 僕は疲れていて、こうとしか返せなかった。

 今の時間がどうなのかは知らないが、おそらく夜なのだろう。

 僕の疲れもあることだし、明日でよかった。


「ともかく今日はゆっくり休みな。疲れが表面に出てるぞ」

「お心遣い、ありがとうございました」

 鳶人さんは部屋を出ていった。


「あぁ、みんな大丈夫かなぁ……」


 僕は天井を見た。


 何もない、その天井を。


 僕の嫌な予感は、取れることはなかった。

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