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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第3章―翼を持つ男―
22/37

22.自信

「はぁー、ようやく講義が終わったっす」

 エクセルはため息をついた。

「やれやれ、お昼に30分の休憩を挟みはしたけど、まさか今日1日じゅう"あれ"をやるとは……」

 ワイヤーは肩をすくめた。

「スタンもどっか行っちまってから……」

「帰ってこないしねー」

 2人は声を合わせ、廊下を歩いた。


 そうしている内に、廊下で"ある男"と鉢合わせした。

「ん?」

「あ、あれは」

 限界まで逆立たような青い髪。そしてなびく黒い隊員服。

 そして鋭い眼が2人を睨み付けた。

「えっと、こいつは……」

「サイス、だったね」

 2人はお互いを見てから、黒服の彼の方向を向きなおした。

「そうだ」

 静かにサイスは答えた。

「てめぇらは確か、エクセルとワイヤーだったな」

「おお、俺って有名人じゃね!?」

「やったねエクセル!」

 2人は喜んでいた。

「あぁ、てめぇらは有名人だ。成績がビリの方であるってことでな」

 サイスは不敵な笑みを浮かべて言った。

「そう、か」

 エクセルは真顔で言った。

「まぁ、しょうがないな」

 ワイヤーはやや落胆した。

「へへへ、分かってるじゃねーかよクズ共が。わかったならそこをどけ」

「なんだよ、さっきから偉そうに」

「おいエクセル……! やめとけって、成績が悪いのは事実だろ……!?」

 ワイヤーが、身を乗り出したエクセルを止めに入った。

「ふーん、やはりてめぇらはゴミだな。キズの舐め合いしかできんのか?」

「んだとテメエ!」

「やめろエクセルっ!」

 ワイヤーは再び、しかし先程より強くエクセルをおさえつけた。

「クックック、ハハハッ! てめぇらやっぱり馬鹿か!?そうやって力に任せることしかできねぇのか!?」

 サイスは声を上げて笑った。

「んだと、クソ野郎ッ!」

「エクセルやめろって!」

 ワイヤーはエクセルを引っ張った。

「離せよ! こんな奴、一回ぶん殴った方がいいんだよ!」

「気持ちが高ぶりすぎだよ、落ち着こうよ!」

「……チッ」

 ワイヤーの言葉を聞いて、エクセルは黙った。


「ふん、俺にケンカ売るってのかよ、面白ぇ」

 サイスは腕を組んで笑いながら言った。

「いいかてめぇ、忠告しておくぜ? 俺が誰かも知らないでケンカ売ったのが、いかに愚かな真似だったかを反省することだ」

 彼はエクセルを指差した。

「……お前、誰だよ」

「確かに、どうしてそんなに僕たちを見下すのか理解できない」

 2人は言った。

「じゃぁてめぇらに質問だ。これ、何色だ?」

 サイスは服の裾を持ち、ひらひらさせた。

「お前、何言ってんだ?」

「色……?」

 2人は困惑した。

「あれえ、馬鹿には難しかったかなぁ~?」

 サイスはにやにやしながら言った。

「その黒服が何だっつってんだよ!」

「そうだ、黒服だ。まだ気づかないのか、馬鹿ども?」

「……あ!」

 ワイヤーが、目を大きく開いた。

「どうした、ワイヤー?」

「そうだ、隊員服に、黒い服があるはずかないんだ。黒色は"闇""暗黒""邪悪さ"を象徴する……つまり"悪魔"につながるんだ」

「なんだって!? だって、現にそこにあるじゃないか」

「そうだ、よく気づいたな。馬鹿にしてはやるじゃねーか」

 サイスは満足そうだった。


「そう……これは特注品なんだよ。"成績トップの人間にしかできねぇこと"なんだよ!」


「な……トップって!」

「成績トップ……やっぱり」

 2人の動揺が表に出ていた。

「これでケンカ売るのをやめる気になったろう?」

 サイスは勝ちを確信したように言った。


「いいや、やめねぇな……逆に気持ちが固まったぜ」


「エクセル!」

 エクセルの自信に、ワイヤーは驚愕した。

「俺、思い出したんだよ。レックス様から言われたこと」

「言われたこと?」


「そうさ……『勇気』を持って『正々堂々と戦う』んだよ!」

 エクセルは、握りこぶしをサイスに突きつけた。


「ハハハハ! 正気か!? ……いいだろう、勝負してやる。てめぇに3日やろう!3日後の夜、大会場でケンカのケリをつけてやる!3日あれば、頭も冷やせるだろうしな……フフフッ」

 そういい残して、サイスは2人の前を通り過ぎていった。


「どうするんだよ、これから」

 ワイヤーは困り果てた様子で言った。

「やるしかねぇだろ、俺から売った喧嘩だし」

 エクセルは、他人事のように言って、再び歩きだした。

「まったく……あれ?」

「ん?」

 ワイヤーは、窓を指差した。

「ラメルだ。何してんだろう」

「外ばっか見てるな」

 2人はラメルのところに駆け寄った。


「スタン君……」

 ラメルは両手を組んで胸に当て、目を閉じていた。

「ラメル、こんなところで何してるの?」

「あ! ここ、これはお2人さんじゃないですか」

 突然の声に、ラメルはびっくりした様子だった。

「何かあったのか?」

 エクセルが聞く。


「いえ、何か嫌な予感がするんです――彼がここにいなくとも、なんか悲しさが伝わってくるような気がして……」

 ラメルは窓から空を見上げた。

 2人も覗き込んでみる。


 空は、秋の夕日で美しく、そしてどこか切なく染まっていた。

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