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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第2章―魔術大特訓―
17/37

17.発見

「才能ねぇ……」

 ワイヤーが呟いた。

「才能って言葉と無縁で育ったもんだから、いまいちよくわからないや」

 いったいどんな生活してたんだよ。


 僕たちは、シルクさんの「魔術講座」1回目を終えた。

 そして、夕食を食べ自分たちの部屋に戻り、ようやく、いつもより長かった1日が終わろうとしていた。

 僕らはベットの上に座っていた。

「どんな環境で育ったの?」

「あぁそうだな、話してなかったっけ。僕の家は一応、貴族と血縁があるとかなんとかいって、それなりに資産はある家庭らしいんだ。生活に必要なことは、基本的に家の人がやってくれてた」

「お金持ちなんだね」

「よくそう言われる。けどな、何でもやってくれちまうってのは、逆に言えば俺に何もさせてくれないことになる。このままじゃぁ、外に出たとき何もできない男に育っちまうって僕は思った」

「それで、ブレイバーに?」

「うん」

 ワイヤーは深くうなずいた。

「ふーん、俺とは真逆だな」

 エクセルがベットに横になったまま言った。

「俺は家が貧乏でよぉ、金を稼がなくちゃいけなくなってよ。それでさ」

「なぁ、スタンはどうなんだ?」

「え?」

 いきなりの質問に僕は少し動揺した。

「えっとね……僕は、ブレイバーになるきっかけがあったんだよ」

「きっかけ?」

「うん。昔……良くは覚えてないんだけど、命を落としそうになったらしいんだ」

「ほう」

「僕の家が火事にあったらしい。幼い僕は逃げ切れず、燃える家に取り残された。そんな時、死にかけている僕を助けてくれたのが、ブレイバーだったんだって。そうおじいちゃんが言ってた。だから僕は、命を助けてくれたお礼として、ブレイバーを目指した」

「すごいな。生計を立てるためでなく、誰かに指図されたわけでもない……」

「うん、格好良いと思った。そんな仕事に就きたいと思ったんだ」

 皆が皆、違う目標を持ってブレイバーになろうとしている。そんなことを僕は実感した。


「そういやさ、寝る前にちょっと魔術の練習しないか?」

 エクセルが提案した。

「夜更かしは良くないよー、明日起きれなくなるよ」

「それに寒いだろ」

 ワイヤーの言うとおりだった。今は秋だ。まだ昼間は暑い日もあるが、夜になれば大抵冷え込む季節である。

「大丈夫だって、持ってきてやるから」

 エクセルは立ち上がった。

「うーん、まぁいいか。なぁスタン、お前はどうだ?」

「うん、まぁ、復習ってことでいいかな」



「……」

「…………」

「………………」

「ああ、もう! なんで揺れることすらしねぇんだよ!」

 エクセルはコップを乱暴にに置いた。

「そう簡単にできるわけないんだよ」

「まぁ、こうだとは思ったけどよ」

 どうしてだろう。

 どうしてコップの水は、びくともしないんだろう。

 僕は黙って、コップの水を眺めていた。

 金髪の少年、スタン・ハーライトの顔が、そこには映りこんでいた。

「うー寒い。やっぱり冷水はまずかったかなぁ」

「まずかったよ。だからいったじゃん」

「でもこれしか用意できなかったんだよ。俺らにお湯くれるとも思えないし」

「だよなあ」

 突如、僕は身震いした。


「あぁ、もう寒くて我慢できない。このお湯飲んじゃえ」


 2人が突然、こっちを向いた。

「お湯?」

「おい、スタン、今何飲むって言った?」

「え?お湯を飲むって……」

 だって寒いじゃん。飲めばきっと、あったかくなる。

「お前正気か?」

 エクセルが驚いた様子で言った。

「え?」


「だってよぉ、俺が持ってきたのは単なる水だ。しかもとびきり冷えたの」

「僕が持ってるものも、確かに冷水だ。お前が持ってるのがお湯なはずがないんだよ」


「えぇ~?」

「ちょっとよこせ」

 エクセルが僕の持っていたコップをとった。

「なに!?」

「どうしたのさ、エクセル!」

「おかしい……確かに渡した時は水だったのに、お湯になってやがる……しかもこんなの、手に持ってただけじゃ到底できない熱さだ……」

「ど、どういうことだ?」

 僕にもわからない。


「あ、そうか!」

 ワイヤーが何か思いついたようだ。

「お前、これもってる時『寒い』とか思ってたか?」

「う、うん……」


「お前、これ魔術だよ! 寒い心が、コップの水に熱を与えたんじゃないか!?」


 嘘だろ。水を揺らそうとしていたら、別の方向で魔術を出したというのか。

「そ、そうなのかなぁ…」

「何はともあれ、お前すげぇな。『熱を与える能力』が得意ってことだろ?」

 エクセルが眠そうに言った。

「でも、これが魔術って確信はあるの?」

 僕はワイヤーに聞いた。

「いや、単なる僕の考えだから」

「明日ホワイタビー先生にでも見てもらえばいーんじゃねぇの?ふぁぁーあ」

 エクセルはあくびした。

「もう遅いから、寝ることにしようか」

「そうだね」

「……」

「あれ?エクセル?」

「どうしたの?」

「…………ぐー」

 エクセルは横になり、目を覚ます様子はなかった。


「あはは……じゃぁ、僕たちも寝ようか」

「そ、そうだね」

「おやすみ、スタン」

「おやすみなさい」


 僕は部屋の明かりを消した。

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