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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第2章―魔術大特訓―
16/37

16.違和感

「ただいまー」

 女の声と同時に、資料室のドアが開いた。


「おかえり……なんて言わんぞ、シルク」

 男は頬杖をつくながら、だるそうに言った。

「言ってんじゃん」

「面倒くさいなお前」

「……あらレックス、また内職? 大変ねぇ。コーヒー持ってきたけど、飲む?」

「変なところで気が利くなお前」

「えへへ、やるでしょ」

 レックスはシルクからコーヒーを受け取った。

 資料室の壁には、相変わらずの大きさの剣が立てかけてあった。

 レックスはその自分の武器を一瞥し、彼女の方を向いた。

「頼んだことは、やってきたか?」

 彼はコーヒーを飲む。

「ええ、もちろんよ。スタン・ハーライトについては、ちゃんと見ておいたわ」

 シルクは両手を腰に置いた。

「どうだった?」

「結構かわいかった」

「そんなことは聞いてない」

「あら、妬いてんの?」

「違う」

 シルクは少し残念そうな顔をしてから、手をあぐねた。

「そうねぇ……」

 そして片方の手を頬に当て、上のほうを見た。

「あ、そうだ。彼、変な所あったわね」

「本当か?」

「うん」

「どう変なんだ?」

「どう変か……うーん、なんていうか表現できないのよねぇ。とにかく違和感があるのよ、彼の『心』に」

「違和感?」

「うん。なんかその……半分しか心が感じられないようで、一人分の心を感じるっていうか、はっきりした精神を感じるんだけど、半分空っぽな状態……っていうか?」

「ふうむ、わからん」

「レックス、自分で確かめてみて。私でも自信ないわ、彼を診るのは」

「ああ、分かった。頼んですまない」

 シルクはうなずいた。


「ところで」

 レックスは机の上に置いておいた、書物を手に取った。

 そして、それをシルクに渡す。

「なに、これ?随分と古いものみたいだけど」

「ひとつ、気になる資料を見つけた」

「え?」


「“天使”につながる情報だ」


「!」

 シルクは自分の持っているものが何かを悟り、身を引き締めて持ち直した。

「その資料は、俺が『倉庫』の中から探しだした『極秘』のものだ。丁重に扱ってくれ」

「う……うん」

「その中に書かれているのは、警察および自警団体だった、当時の『ブレイバー』が身柄を拘束した人物の中で、公にはならなかったものが載っている」

 彼女には驚くことしかできなかった。震える手で、ページをめくっていく。

「21世紀の部分を見て欲しい」

「21世紀…1000年前ね」

「そう」

 シルクは言われるまま、その部分のページを開いた。

「え!? こ、これって……」

「1000年前、ある一人の男が『人類自身の力で空を羽ばたきたい』と思ったそうだ」

 開いたページには『誘拐・テロ未遂容疑で身柄拘束  要注意組織 ”鳥人間計画” 幹部12人』と書いてあった。

 

「鳥人間……計画?」


「Bird Man Project 、略称BMP。世界中の科学者たちが集結し、『鳥人間』の開発に勤しんだそうだ……『人類の進化への大きな一歩』のためにな」

「……」

「一見すると有意義な組織だが、やり方が非常に悪質なものだったらしい」

「悪質って?」

「どうも鳥類のDNAや、翼そのものを人間に植え付けていたらしいのだが、被験者をどう用意してたかというと……」

「ま、まさか……」

「そう、そこに書いてある通り、幼い子供を『誘拐』してたというんだ」

「そんな……」

「そしてこいつらの姿は資料によると…『人間の背中に大きな鳥の翼を生やした姿』だったそうだ」

「そ、そんな!」

「俺の見解だと……あいつらは最終的に自分たちに翼を植え付けた」

 シルクは黙って、レックスの『見解』を聞いた。

「そして、奴らは科学者だ。科学者ってのは、まともじゃない奴だったら何しでかすかわからん。戦闘に長けてる奴だったかもしれん。『翼』を持ち、『戦闘能力』がある……言い換えれば、『神聖なる翼』、『神聖なる力』を持つ者たちだ。これほどの巨大な計画、支持する人がいても全く不思議だと思わないだろう」

「え、てことは……」


「“鳥人間計画”のメンバーこそ、“天使”である可能性が高い」


「な、なるほど……」

 シルクは腕を組んで、納得している様子だった。

「で、1000年経った今でも、残党……つまり、意思を引き継いでいる者がいてもおかしくはないな?」

「うん」

「つまり、どうやら俺らは鳥人間に、慎重にだが……接触を計る必要があるようだ」

「ちょっと待ってよ。鳥人間と接触って、どうやってやんのよ」


「俺には、1人心当たりがある奴がいるんだよ、鳥人間計画に関与した奴でな」


「……あ!ひょっとして」

「そう……“アイツ”だ」

「アイツかぁ……」

 シルクは少し困った様子で腕を組んだ。


「ねぇ、確かあいつ、今どこか行っちゃってて、連絡とれないんでしょ?私たちは忙しいから、探しにいけないし……」

「確かにそうだな…」

 今度はレックスが腕を組んだ。


「……そうだ、いいことを思いついたぞ!」

「何をする気?」


「この案なら、調べたいことがいっぺんにできるぞ…!」

 レックスは拳を握り締めた。


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