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BRAVER-大会編-(前)  作者: Tommy
第2章―魔術大特訓―
13/37

13.出発

 あの事件。悪魔が、僕たちの町に襲来した事件から、4日が経過した。


 僕はあの日、寮の前に降り立った悪魔たちを倒すため、下に降りて戦った。

 しかし“炎天砲”ですら倒す願いは叶わず、僕だけ取り残されて、あいつらは僕に一斉に襲いかかって来た。

 それ以降のことは、全く覚えていない。


 目が覚めたとき、何が起きたのか、よくわからなかった。

 そこは、寮の中だった。36号室。僕の部屋だ。

 目の前には、エクセルとワイヤーがいる。

「スタン、お目覚めですかい」

「ようやく起きたのか。心配したんだよ」

 2人が、何故か優しく話しかけてくれた。

「え、どうなってるの……?」

 僕は混乱していた。わけが分からない。なぜ、いつの間にここにいるのか。

「そうだ、悪魔はどうなったの!? 死んだの僕!?」

「はぁ? 何言ってるんすかぁ?」

「君、今僕たちと喋ってるじゃん。生きてるに決まってるさ」

「そ、そうだよね! じゃぁ、一体誰が悪魔を―――」

 そのとき、あの人の顔が思い浮かんだ。

「そうか! レックスさんが! レックスさんが、助けに来てくれたんだね!」

 流石はブレイバー最強の戦士だ!

「あ、あぁ……」

「んまぁ、そんなところだね」

「あはっ、やっぱりかぁ! すごいや、あんな人になりたい!」

 気持ちが表面に出ていた。

「まぁ、とにかく……さっきは、ごめん」

 ワイヤーが頭を下げた。

「お前があんなに強いとは思わなかったんだよ」

 エクセルが付け加えた。

「え? 僕何もしてないよ?」

 あの時、2人はただ転んだだけだ。僕は何もしていない。

「でも、分かってくれたならいいや。これからよろしくね。エクセル、ワイヤー。仲良くやろう」

「あぁ」

「うん」

 2人は声をそろえて答えた。



「スタン!!」

「うぉぅっ!?」

 突然、僕を呼ぶ声がした。

「なんだよ、いきなり!」

「なんだよ、じゃねーっつーの!もう順番だぞ!」

 エクセルがあきれた調子で指をさしていた。

 指差す方向には、カフェテリアのカウンターがあった。

「お客さん、何も買わないの?」

「えっと、ああ、じゃあこのパンをひとつ……」

「オケーセンキュー。お客さん小食だね」

 後ろで、多くの人の視線を感じた。

「やれやれ、ボーっとしてるからさ」

 ワイヤーが肩をすくめた。


「全く、まだこの行列には慣れないなぁ」

 エクセルがハンバーガーをほおばる。

「僕たちは新米だからね」

 ワイヤーはカレーを食べる。

「うん」

 僕は食パンをかじる。

 4日も経つと、大分周りの空気も落ち着いた。僕たちの食う気も普通に起きた。

 カフェテリアは、ブレイバーの食事の場であり、唯一の休息の場だ。

 ここにいるとき以外は、いろいろ準備とか、復旧作業とか手伝わされて、新米なのに容赦は無かった。

 しかし、その甲斐あってか、予定より早く復旧作業は終わったようだ。

 隊員たちの怪我もほとんど治ったようだし、ようやく僕らは『魔術』を教わることとなる。

 シルクさんから「今日の午後から、ビシバシ教えていくわよ!」と言われたとき、嬉しくもあり、悲しくもあったことを思い出す。

「ねぇ、魔術って、結局何なんだろうね?」

 僕はパン耳をかじりながら聞いてみた。

「さぁな」

「知らないな」

 二人は食べるのに夢中のようだ。

「うーん……じゃぁ、シルクさんってどんな人なのかな?」

「さぁな」

「わからない」

 返事は大して変わらなかった。

「そんなこと、今日になれば分かることだろ」

 そう言いってから、エクセルはコーラを飲んだ。

「そう急かすなよ」

 ワイヤーがオレンジジュースを飲みながら言った。

 僕は水を飲んで、……それ以上は何も言わないことにした。


「さてと、食った食った。教習室に向かうか」

「うん、寝ないようにしないとね」

 2人とも、気楽でいいなあ。

 心の叫びとともに腹が鳴った。


 教習室に着いた。

 そこにはは長机と椅子が並べてあり、それとホワイトボードがあった。所謂普通の会議室だった。

 時間がちょっと早かったのか、誰もいない。

「えーっと、どこに座ろうか」

「真ん中らへんでいいんじゃね?」

「じゃねじゃね?」

 僕たちは真ん中らへんにすわった。

「……あれ、何かボードに書いてあるぞ」

 見つけたのはエクセルだった。

「ほんとだ」

「なんだろ」

 ホワイトボードに小さく、丸っこい字で書いてあった。


 座って待っててね>▽<b♪ シルク


「なんだよこれ、ほんとにこんな人に教わるってのか?」

「気持ち悪い……」

「……」

 僕は何も言えなかった。こういう人に限って実はすごかったりするんだよな。

「と、とりあえず座って待とうよ」

「そうだな」

「うん……」


 この時は2人とも、シルクさんのことをナメていた。

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