第二話
実質一話
ピリリリリリリ……
「う~ん……」
けたましく鳴り響く目覚ましを乱暴に止めて起床すると一日の準備を始めた。いつも通りに着々と進めていきそのまま着慣れた制服に袖を通し家を出る。
「今日は入学式か……」
この学園に入学してから早一年、俺自身には特に何があるでもなく平穏に日々が進んでいった。決闘も何度も挑まれたがすべて返り討ちにした、結果俺にはいまだに恋人と呼べる存在はいない。まぁ特別ほしいとも思わないのが本音だが。
ドンッ!
「きゃっ!」
「おっと……大丈夫か?」
曲がり角を歩いていると走ってきた少女にぶつかってしまった。俺は無事だったが彼女は座り込んでしまっていたので手を差し伸べた。
「……あっ、すいません。ありがとうございます」
「いや、俺も不注意だった。それよりいいのか?走ってたってことは何か急ぎの用があったんじゃないのか?」
「!そうでした、すいません。私もう行きますね」
「そうか、今度はぶつからないようにな」
「はいっ!」
そう勢い良く返事すると再び彼女は走り出し、そのまま角を曲がって見えなくなってしまった。そこまで見送ると再び俺もゆっくりと歩き始めた。
何だったんだ?制服を見るに彼女も学園の生徒らしいがまだ時間には余裕があるはずだ。……うん、時計を確認してみてもやっぱりまだ余裕がある。友人との待ち合わせでもしてたのか。
「……っと、ついたか」
そんなこんな考えながら歩いているといつの間にか学園前についていた、今日は一年は体育館で入学式を行い二年三年はクラス分けの発表と顔合わせやらなんやらがあって解散だ。
さて、さっそく俺もクラスを確認するとしますかね。
既に何人かの人混みができているあたりをやや離れるように奥へ進み男子のみが固まっているエリアに向かう。
クラス分けにも男女で区別しており張り出されている内容は一緒だが張り出されている場所が離れている。それで俺が来たこっちが男子用というわけだ。ちなみに一か所に貼ったのではとても学園の人数をカバーできないとクラス分けは複数個所に貼ってある。
「おっ!一星じゃねえか、お前はこれからクラス見んのか」
「ああそうだぞ」
「じゃあせっかくだから一緒に見ようぜ!」
「向こうから来たってことはもうお前は見たんだろ?」
「まあな、でもいいじゃねえかそんな事」
クラス分けの紙が張り出されている位置から俺に気づき声をかけてきたのは早瀬翔。短めの明るい茶髪に整った顔立ち俗にいうイケメンというやつだ。俺がこいつに対してそう言ったらお前が言うなと返されたこともあったな。
去年同じクラスで仲良くなった人物だが妙に馬があったからか今もこうして関係が続いている。
まあ残念ながら今年はこいつとは違うクラスだろうな。翔なら「今年も同じクラスだな!」くらいは言う、絶対言う。
「とりあえず端から見てくか」
「そうだな」
翔に続いて数あるクラスを下の方から順々に見ていく、なかなか俺の名前が見つからずついに反対の端まで来てしまった。
「Aクラスか……」
そこでようやく自分の名前を見つけた。と言うか……。
「お前も同じクラスだったんだな」
「おう、そうだぞ何でそんな顔してんだ?」
「いやおまえなら今年も同じクラスだな!とか言うと思ってたから完全に別のクラスと思ってたわ」
「何でだよ!こういうのは自分で見るから面白いんだろーが、それを奪うようなことはしねーよ」
「……お前結構ちゃんと考えてたんだな」
「どういう意味だそりゃ」
そのままの意味だとしか言いようがない。
「てかAクラスの男子俺らだけじゃないか?」
「そうだな」
「おかしくね?」
いくら男子が女子と比べ少数でも俺たちの代はやや男子が多いらしく去年はもう数人ほど同じクラスにいた気がするが。
「いや、今恋人のいない男子って俺らだけだろ?だから学園側がこうやって女子の多いクラスにぶちこんで恋人を作らせようって魂胆だろ多分」
「なるほどなー、確かにそうか。てかお前はいるじゃん実質彼女」
翔のやつは昔からの幼馴染がおり、実際いつも付き合ってるだろとしか言いようがないことをしている。何でまだ付き合ってないかと言われれば、意外にも翔はそこそこ強く、その幼馴染に勝ってしまったのだ。
翔はその後も付き合おうとしたそうだがその幼馴染が「正式に付き合うのは私が貴方に勝ってから!でも手を抜いたら許さない」と言ったかららしい。
そしてこの一年間翔の全勝で未だ交際には発展してないとか。周囲もそれを理解しているはずだ。
「確かに、それじゃ実際はお前に恋人を作らせるためのクラスか」
俺もこの一年間で何度も決闘を挑まれたが全て返り討ちにしてきた。結果俺にそのような存在はいない。今は落ち着いてきているから校則を破らないために月に一度しかやる予定はないが。
「でも見る限りほとんど俺に負けたやつばかりじゃないか?」
「知らんわ」
「それもそうか」
いちいち俺の対戦相手のことを知ってる方がおかしいか。
「そんなことよりも早く教室行こうぜ」
「そうだな」
翔と横並びになって話しながら教室に向かう。道中見られることはあれど話しかけられることはなく無事にAクラスの教室に着いた。
「ショーウッ!」
「おう」
大声で名前を呼びながら接近してきたのは南香織、噂の翔の実質彼女だ。翔と似た明るい茶髪のポニテが揺れている。
「香織も同じクラスだったんだな」
「そうだよー、あっおはよう一星」
「ああ、とりあえずイチャつくなら放課後にしろそろそろ先生来るだろ」
「あっ、そっか。じゃあ私は席についておくよ。翔放課後はよろしくね」
「了解」
俺達に向けて手を振ると元の自分の席に戻り近くの友人と話し始めた。
「それじゃ俺たちも座るか」
「そうだな」
席を確認すると翔とは前後で一緒だった。翔の後ろに座ったタイミングで丁度先生が入ってきてそのままホームルームがスタートした。
ほぼ出てこないヒロインちゃん