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「お前ってさ、いつもは威厳たっぷりって感じなのに時々流れてくるオーラ?っていうか雰囲気がなんか不思議っていうか、聖なるって感じがするよな。」
中庭で昼食時、弁当を仲の良い数人で食べてる最中に友達が発した一言。
俺、黒石悠飛はそんな何気ない一言に箸がとまった。
その言葉に友達が賛同していく。
「わかる!悠飛って時々別人みたいな感じになるよな。」
「いつも威厳たっぷりで近寄りがたいオーラ出してて、次は聖なるオーラ出してるってやばくね(笑)?」
「初めて話しかける時こそ勇気いるけど、話してみるとかなりいい奴だったときは驚いたよな。」
周囲が俺の話で盛り上がっているが、その会話に意識が向かず俺は別のことを考えていた。
瞼を閉じると思い出してしまう顔がある。そして意識は暗闇のそこへと引きずりおろされる。
ふと、周りの音が聞こえなくなった。何かと思い目を開き驚いた。
「悠飛、お前なんで・・・。泣きそうになってるんだ?」
友達に言われた一言で我に返った。急いで目尻のあたりに手を当て確認するが、泣いてはいなかった。どうやら目に涙が溜まっているだけのようだ。そして俺は、すぐに手の甲でそれを拭い笑顔を見せた。
「バーカ。泣いてねえよ。ちょっと思い出しちまっただけだ。」
友達たちは目を見合わせて首をかしげていた。心配してくれたのか、たずねてきた。
「なんかあったのか?もしや彼女とかか?」
と、今度は隣で座ってたやつがそう聞いた友達の口をふさいだ。
「おいおい。そこは聞かないほうがいいだろ。いろいろ知りたがるのは小学生までにしとけって。」
なんて大人な発言をするのだろうか。俺はついついそこに関心してしまった。
しかし、感心してる場合じゃないと気付く。ここは俺がしゃべる番だ。
「いや、いいよ。聞いてくれても。ほかの人だったら嫌だけどお前たちになら話してもいいかもな。ほら、その・・・親友だし?」
別に照れながら言ったわけではないが歯切れが悪くなってしまった。その言葉に対する周囲の反応はまちまちだったが全員驚きと嬉しいような感情が顔に出てしまっているようだった。
「そうか。親友か・・・。ついにお前の口からそんな言葉が出てくるようになったとはな。」
友達がしみじみというその言葉に、俺が呆けている間に友達はみんな姿勢を正していた。
「え、ちょっと待て。それじゃ俺が変な奴だったみたいにな・・・」
俺がしゃべっているというのにその言葉を遮るかのようにして、友達の一人が言った。
「さぁ、いつでもいいぞ。お前が泣いている原因。お前が飽きるまで聞いててやるよ!どんとこい!」
「いや、泣いてないし。しかもなんでそんな熱血漫画みたいな口調で言ってるんだよ・・・。話すけど結構長い話になるから今日一日ではしゃべり切れないぞ。」
俺は冷静に突っ込みを入れながら、俺の言葉にうなずいてくれるこいつらの存在を嬉しく思った。
そして俺はゆっくりと昔の記憶を持ってくる。そいつの事を思い出しながら・・・。