表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/314

95話【かつて名を呼ばれた者たち】

「……まず、フェン兄様。よろしいですか?

 最後の、途方もなく巨大な大鏡人(ミラーフォーク)……彼、あるいは彼女は――何者なのですか?」


ヘルがやや緊張した面持ちでお兄様(フェンベルトス)に問いかける。

それはボクも気になっていることだ――アレは、倒せるもの(・・・・・)なのか?


「ああ、彼こそがこの地の総部族長(レンスヘル)

 名を……確か【夜帳(よとばり)流星(ほし)(こぶし)】だったはずだよ」


『……それは、二つ名(・・・)では無いのですか?』


鉄砂海峡(ラザントゥロウム)大鏡人(ミラーフォーク)は[個体識別名(なまえ)]を持たないようでね。

 [他者から呼ばれる通称(ふたつな)名]か[出身地名うまれたばしょのなまえ]で呼ばれるのが普通さ」


そうか、そういうものもあるのだな。

[状態:記録(おぼえておく)]ことにしよう……。


『では、先の[竜獣/巨人(ふたり)]の名は?』


大鏡人(ミラーフォーク)の方は――有名人だな。[小さな岩場(エクァリッロ)]だ。

 自己強化(・・・・)を得意とする、なかなかの(サン)術使いだったらしい」


そうして、彼女(かれ)は続ける。


鎧龍人(ガライリ)の方は、確か――[スー・マラード]だ。

 ……話したこと(・・・・・)がある」


{気のいいひとだったよ}と続ける彼女(かれ)の表情は、何の変化もないように見えるが――どこか[憂い]を隠しているようにも見える。


「――痛ましいですね、フェン兄様」


「いいや、ノア。

 彼女(あのこ)戦士(たたかうもの)である以上、戦場(いくさば)での死は至上の(ほま)れさ。

 ……[直接的無関係者(われわれ)]が、口を挟むべき事柄じゃあない」


{憂い}の色は、影が差すように濃く顕れる。

死せる戦士の館(ヴァルハラ)めいた死生観(シのあつかい)であろうとも、どうやら思うところは在るらしい。


『――戦士(・・)、なのですか。

 となれば、[詳細不明:ガライリ(そちら)]が[砂上の部族戦士(ちじょう)]の?』


「うん? いいや、彼女は水陸棲人種(アンフィビアン)の方さ。

 鉄砂海峡(ここ)は【魔物】も多い――誰も彼もが戦士(たたかうもの)で在らねばならない」


――おっと、そういうことか。

[一説の否定≒(それ)他一説の肯定(なら)]――


『では、[推定:大鏡人(ミラーフォーク)]が地上の。

 [推定:鎧龍人(ガライリ)]が地下水脈に生きる者なのですね』


「――ああ。すまない、前提情報の共有(それ)を忘れていた。

 ともあれ、そういうことだ。

 堕ちた"錆砂(サビズナ)"の狂気(・・)に囚われたのが、地上の大鏡人(ミラーフォーク)達。

 広がる"濁水(ダクスィ)"の狂気(・・)に囚われたのが、地下の鎧龍人(ガライリ)達だ」


――[固有名称定義(なまえ)]、か。

弾丸(・・)めいた墜落渡空艇から広がった狂気(・・)が【錆砂(サビズナ)】で。

細菌破壊者(ファージ)めいた正二十面体結晶(クリスタル)感染源(・・・)と思しき狂気(・・)が【濁水(ダクスイ)】と。


「そんなところかな。

 他に何か、聞いておきたいことは?」


――聞いて、おきたいこと。

待てよ、そういえば――


『――それなら、一つ。

 兄様を追っていた(・・・・・)――つまり、兄様の持つ物品(・・)を狙っていた――のが、錆砂(・・)の者であるならば。

 錆砂(かれら)横奪(よこどり)しようとした物品(・・)とは、彼らにとっても価値の在る(・・・・・)ものなのでしょうか?』


不意に、彼女(かれ)視線を落とす(・・・・・・)

{思考}の仕草――おそらくは、[話すべきか/話さざるべきか]の逡巡。


物品(それ)についての[詳しい話]を避けていたところを見ると、おそらく――


「――なんと、言うべきだろうね。

 これは――そうだな……」


「私も気になります、フェン兄様。

 それが[如何なる物品(・・・・・・)]で、[どのような作用があり(・・・・・・・・・・)]、そして、[如何にして【解呪】を成し得る]ものなのか、と」


彼女(かれ)の輪郭の揺らぎが薄れ、形状(シルエット)が少しばかりハッキリとしてくる。

――{思考}を行う際の、癖のようなものだろうか。


少し過ぎ――彼女(かれ)は再び、視線を前に向けた。


「――ああ、つまりだ。

 話は其処に戻ってくる(・・・・・・・・・・)

 そして――」


彼女(かれ)は少しの{迷い}を見せ、ゆっくりと次の言葉を紡ぐ。

取り出した小瓶(・・)を揺らし、集約する視線を捌く。


「――そう。

 あえて誤解を承知で、端的に言うのなら――



 ――これ(・・)こそが、錆砂(・・)狂気の源(・・・・)なんだよ」


放たれた言葉は揺らめきを伴い、波立つように波紋を生じさせた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ