8話【アーマリー・アーム】
[基底演算演目][兵装展開式]
[読込......完了]
[【腕に抱く造兵工廠】]
[――起動]
両腕に、無数の亀裂が走る。
否、それは瑕疵ではない。
そう言う風に、出来ている。
『[検索項目]
["対装甲"]
["貫通"]
["一撃必殺"]』
敵性存在に対する対抗策。
即ち、どうやって破壊するかの要素を入力する。
[該当XX件...][出力][――展開]
データベースが応える。
最大限、検索項目に合致した武器。
その電子情報を、両腕の【造兵廠】へと送り込む。
そして、亀裂から銀血液が噴出する。
亀裂が瑕疵でないのなら。
この噴出も、もちろん。流血などではない。
噴出した銀色の圧縮血液が、無数の極小機械粒子によって成形され、
一つの形を得る。
右腕を覆うほどの、銀色の光沢。
肩の辺りから生えた、大筒状の金属塊。
腕の先、大筒の先端には。
鋭く尖った、大質量の金属部品。
それは、楔。
それは、槍。
それは、杭。
それは、強固にも重ねられた、鋼の鎧を刺し貫く。あらゆるものを穿つ矛。
――ボクの世界では、こう呼ばれていた兵器だ。
『杭打式近接徹甲槍弾』
「――あれは……武器、なのか――?」
――然り。
そして、コレこそが、ボクの機能。
データベースに記載された無数の兵装の一つを選び出し、【造兵廠】に送信。
開閉機構を開放した腕部から、内部貯蔵された流体溶金と極小機械粒子を展開し。
放出されたそれらを材料に、【造兵廠】の兵装を創り出す。
その様、正に[小さな兵器工場]。
両腕の中に、収まるほどの。
だからボクは、そう名付けた。
【腕に抱く造兵工廠】と。
『――行きます!』
両腕に掴んだ長蟲の顎を、思い切り地面に叩きつける。
ズシィンと、重みのある音が響き渡る。
だが、この程度で怯んでくれる相手ではないだろう。
故に一瞬。それだけで十分だった。
叩きつけた反動を利用して、飛翔。
低所に引き摺り降ろした長蟲の頭部に飛び移る。
『[準備段階移行]』
槍弾の先端を、二対の赤い目の中心に向ける。
人間ならば、眉間に当たるところだろうか。
ここにある。
何かは分からないが、確かにここにある、と。
長蟲を破壊するには、この位置を潰せと。
理解とは程遠い、単なる直感。
だが今は、それで"十分"だ。
ボクは十分に狙いを定めた上で――
『滅びろ、長蟲野郎』
――必殺の杭を、獲物目掛けて撃ち込んだ。