表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/314

83話【蒼天】

狙いは唯一つ、[動力中枢(しんぞう)]を穿てばいい。


それは即ち、頭部前方(ひたい)の【楔】の位置に他ならない。


だがそれは別の不安を掻き立てる。


――(あれ)は、壊れないもの(アンブレイカブル)だろうか。

そうであれば直に打ち込んだところで目的は達せられる。


だがアレが容易く砕け散るような実に滑稽な代物――である可能性も、当然ながら大いに存在するのだ。


ならばどうする? [仮定(もし)物理的脆弱性(そうだったとしたら?)]

――簡単な話だ、【(それ)】以外を破壊(・・)すればいい。


[頭部のみ(くび)を、切り離す(はねる)]のだ。

必要ならば、残存部位(のこりもの)を逐一[凍結処分(ダメ)]にしてゆくのもいいが。


おそらく、この【蒼天(なづけたもの)】なら――可能だ。


杭撃機(パイルバンカー)の射出機能はそのままに。

一点集約し(まとめて)対構造物射撃(ほうげき)に足るだけの出力(パワー)を与えた。


両刃直剣弾(たま)の方も、それだけで中距離戦闘武装として使えるはずだ。

いくらか、質量過多(おもすぎる)が――当機(ボク)出力(ちから)であれば、振るうのに苦労はしないだろう。


――ならば――!


最初に、すべきことは――


『――っ!!』


迫るは高速飛翔体(・・・・・)――[数量:2(ふたつ)]!

それは先程まで[行動停止(ちんもく)]していた、残りの()!!


[推定:行動の阻害(めんどうな)]


ボクは杭撃砲(たて)ごと直剣弾(つるぎ)を持ち上げ――一閃する(ふりはらう)


『くっ――!!』


うねうねと曲がりくねる尾は巧みに剣撃の隙間をくぐり抜けると、素早く攻撃対象(ボク)への距離を詰める!


攻撃速度(はやさ)に於いて大きく不利――[装甲盾(バックラー)]で防ぎきれるか!?

あるいは杭撃砲(こいつ)を離して白兵戦に――



「{"――(こお)れ、()てつけ、(こご)えて眠れ!

    永久(とわ)なる凍土(とうど)(とざ)されて――

    (とお)(とき)より()き放たれよ!"}

  ――()()凍雨(とうう)よ!

  (サン)術式【落花流氷(フリージングドロップ)】!!」


『――ヘル!』


飛来した氷弾の嵐が尾の先端を穿ち、その攻撃能力を失わせ(はかいする)る!

もう一本の尾も同様だ! 渦を巻くようにして撃ち込まれた氷弾(たま)が強固な石材(いし)を砕き、圧し折られた(それ)は斃れるように地へ落ちる!


そして【雹の弾丸(さきほどのもの)】よりなお痛烈で禍々しき冷気が辺りに満ちる!

即ち、その傷はもう[推定:魔力循環阻害(なおらない)]ということ!


ならば――


「――メガリス!」


『――[応答(はい)]! ヘル』



――そう。

続く言葉(・・・・)など、決まっているだろう?



やれ(・・)、メガリス!

 石蠍(てき)を――討て(・・)!!」



[命令承認オーダー・アグリーメント]


――言われずとも!


『 [対象標的(ターゲット)完全捕捉(ロック・オン)] 』


所々凍結し、影縛られ(とらわれ)つつある巨大な石蠍(ひょうてき)

位置取り(・・・・)は既にできている(・・・・・)――狙いは定まった――あとは、そう――


――穿ち抜く(ブチぬく)だけだ!


『 [一號(プライマリ)/二號(セカンダリ)/三號(ターシャリ)――統合杭撃機(トリニティバンカー)] [砲撃準備完了(セット)] 』


[対反動(カウンター)後背部噴進(バーニア)...総展開(フルオープン)...演算直結(スタンバイ)]


[鉄血炸薬(ラーヴァパウダー)総量:完全充足(グリーン)]

[総身鉄血量(ラーヴァステート)動作完全性を依然保持(オールグリーン)]


[投射軌道演算:完遂(コンプリート)][推定加害:全壊相当(アナイアレイト)]...[待機(オーバー)]


『――[射出式杭撃砲(バンカーバリスタ)] 【蒼天(ブルースカイ)】――』



 ――頭を垂れよ(おわりだ)、[賽の積石(ムダいし)]――



『 [兵装解放・(オープン・)総身攻撃指令(ファイアリング)]――!! 』



――飛翔。

それは刹那の間に終了し(おわり)


着弾。

接触。


(つるぎ)は、石蠍(やつ)頭部(・・)へと飲み込まれていく。


()爆音(・・)轟音(・・)

――それさえ、今は一つもなく(・・・・・)


蒼天(するどきやいば)は、跳ね上がるような軌道で――

――石蠍(やつ)の体を上下割断(せつだん)してゆく。


――残響。

ただ、杭撃機(バンカー)射撃音(おと)だけが、[光差す大穴(このくうかん)]に響く。


やがて訪れる音。

それは――


――崩壊の音(くずれおちる、おと)


【楔】の接続(つながり)を絶たれた石蠍(それ)は、既に[与えられた内包世界(しんり)]を保てず。

偽りの[有思者の形(せい)]を失い、只の瓦礫(しせるもの)へと回帰する。


――そして。


『――其処、ですね』


跳躍。飛翔。登攀。

――何もかもが、崩れ去る前に。


えぐり取るように、刎ね飛ばされた。頭部(しるされたばしょ)

突き立てられた――【楔】を!


『――捉えたッ!』


掴み――引き抜く!


『[任務遂行確認(よしっ)]! これで――』




――...(`)......〓〓(_`)......――


『――っ!?』


(それ)に、接触した(ふれた)時。

ボクの中に、流れ込んでくる情報(もの)があった――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ