82話【眩き光を掻き消すもの】
[通信確認]...[応答確認]――
『――セタ、少しよろしいですか?』
「――なんだい?
アタシは今――気が立ってるんだ」
『石蠍を、屈辱的に仕留める相談なのですが』
「……乗った。
何処を狙えばいい?」
『右前肢の剪刀――正確には、その根本です』
「――ああ、成る程。
そいつは確かに、屈辱的だ」
『可能ですね?』
「そりゃあね。もちろんさ。
だって――アタシは母なる海なんだろう?」
『……悪い冗談です』
「ハ、そうしたのはアンタさ。
[海母神]だと[定義づけた]のは」
『……[肯定]。
よくお似合いですよ?』
「ハ……笑わせてくれるねェ。
いいよ、メガリス。やってやろうじゃないか――!」
[通信終了...]
須臾の合間に会話を済ませ、並行して脚部の修復を完了する。
直後――聴音器官に聞こえてくるのは、〓〓〓〓!
「――〓-〓-〓_〓-〓_〓-〓-〓!!!
〓-〓_〓-〓_〓-〓――!! 」
現れた影は――あまりにも刺々しい、無数の揺らめく刃!
否、これは――"植物"! 揺らめく葉は刃と化し、〓〓の儘に舞い踊る!
餌を待つ魚が水面に群がるように、地より突き出た影の刃葉ども――
影は揺らぎ増え広がり――遂には石蠍の下へと至る!
迫りくる影刃に一瞥すらなく、鋭く重き剪刀で切り払う石蠍!
影草が薙がれ散り掻き消え行く――
されど、また新たな刃葉が生まれ落ちる!
散乱する影刃、切り裂かれる影草。
増えゆく影刃は[葉/刃]を伸ばし――
――石蠍の巨影をも呑み込もうとする!!
全身は[影刃拘束下]――
損傷は[修復機能凍結]――
即ち、石蠍は今――
『――捉えたッ!』
――当機の、射程に在る!!
修復済みの噴進による跳躍、加速。
影縫われた石蠍の剪刀は――既に眼前!
『装甲斜方盾・装甲展開!
[一切瑕疵無し]【一號杭撃機】――』
斜方盾より上方に伸びる二本の杭弾。
左方の一つ、第一の杭弾。
比較的[低質量]杭弾だが――
[局部破壊]なら――これで十分!
『完全固定――』
[攻撃対象:剪刀基底部]――
『――[兵装解放・射出]!!』
――叩き込む!!
爆ぜる音、滑る音、風切る超高音。
金属と石がぶつかる音――そして、石が砕ける音!
剪刀はその根本を失い、受けた衝撃に依って宙を舞う!
翻り跳ね跳ぶ剪刀! だがその動きを当機の視界が見逃すことは無い!
『――貰ったッ!』
第一杭弾を分離し、即時跳躍。
主を失ったその剪刀目掛けて――
『【三號杭撃機】[完全固定]!
そして――』
第三の杭弾!
斜方盾下部に突き出た、最も[高質量]杭弾!
それは、即ち――最も鉄血量の多い部品ということ!
『――[兵装解放・射出]!!』
――可能なはずだ、おそらくは。
――魔法のように!
『即時連続行動――兵装局部解放!!』
剪刀に打ち込まれた杭弾は――
命令に従い、元の鉄血へと変質していく!
揺らめく鉄血へと回帰した杭は、
巨大な剪刀を瞬く間に呑み込み、奪い、そして――加工する!
『――[名付けるならば]――』
斜方形状の盾など、もはや飾りに見える程に。
下方に大きく突き出た刃は、身の丈より遥かに巨大で、長く――鋭い。
組み換え打ち直されたその刃は、もはや剪刀の形状に非ず!
両刃の直剣にも似た――翳り無き蒼穹が如き[一振りの刃]!
『【鹵獲兵装・杭打式徹甲剪刀弾】……改
――[射出式杭撃砲] 【蒼天】!!! 』
――即ち、[蠍の心臓]を掻き消す朝焼けの陽――
――真理を死へと書き換える、[-1]文字の伝言。
ボクは兵器を構え、石蠍の巨体をじっと見据えた――




