7話【武器】
「……っ! 来るぞ!!」
金髪の少女が、腰に帯びた剣を抜き放つ。
現れたのは、刀身が異様に長い、細身の剣。
それを両手で、流れるような動きで構えた。
顔の高さまで上げながら、剣先は眼前の敵へと真っ直ぐ向けている。
あの剣は――
鎧通し――刺突細剣に似た、突き刺すことに特化した刀剣……。
あれは華美な外見に似合わず、使いこなすにはそれなりの腕力を要するものだ。
伊達や酔狂で持っているのでなければ。
お嬢様はあの細腕で、結構な力持ちという事になる。
一方、片眼鏡の少女が構えるのは、先端に刃の付いた筒状の長柄武器。
持ち手と思しき部分には、引き金らしき装置が確認できる。
――成る程、銃剣という訳か。
となれば、持ち手と銃身の間の輪胴は、リボルバー式の回転式弾倉に違いない。
魔法か、化学か、あるいはそれ以外の――どういう技術かは分からないが。
あれは、少なくとも。"それなりの進歩"を経た武器だ。
……であれば、この世界は。
少なくとも、それだけの戦斗を越えてきた事になる――
「なっ――!! 避けろ、メガリスッ!」
……うん?
眼前には、"長蟲の巨大な顎"――いけない、観察に時間を掛けすぎた。
しかし、ボクを狙ってくるとは。なかなか強かな奴だ。
少なくともこの三人の中で、ボクが一番、弱そうな見た目をしているのだから。
だが―ー
『不正解ですよ、芋虫さん』
両の腕を開き、両顎を掴み、思いっきりこじ開ける。
「ええっ!?」
「何だと!?」
二人の少女は、ボクの外見に似合わぬ怪力に困惑の表情を見せているようだ。
……外見。……いいさ、今は、気にしない、ことにしよう……。
――さて、どうしたものか。
このまま引きちぎってしまっても良いのだが、それではトドメを刺すことが出来ないだろう。
折角、動きを止めているのだ。
何度も何度も読み返した、アーカイブ内のマニュアル。[項目:武装]
この兵器の―ー即ち、"ボクの武器"を、試してやるとしよう。
『――ヘレノアール嬢』
「どうした、メガリス!?」
ボクは彼女に問いかけた。
……重要な事だ、兵器には、何よりも欲するものがある。
『これは、敵ですね?』
金髪の少女は、息を呑み、凛とした声で応じる。
「――そうだ。これが、私達の、"敵"だ!!」
[命令承認]
『――御意に、[敵性存在}を撃滅します』
両腕に流れる鉄血が奔る。
それは、即ち。
ボクの、兵器としての意義。
ボクが武器を得る、{第一段階]の鼓動だった。