表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/314

74話【かたちというもの】

「――美しい――!

 だが、これは……?」


『――言うならば、ボクの分身(・・)と融合させた形です。

 多少、姿は弄れましたが――あくまで、女神の似姿(ボクのすがた)基軸(ベース)のようです』


「――なら、お前にとっては実妹(・・)ということになるな。

 それにしても美しい――あ、もちろん、お前もだ、メガリス」


状況だけで言うのならば、()ということにも成りかねないが……そういうことにしてしまおうか。


「――ぁ……」


彼女(セタ)目蓋()を開き、自分の手や足を見つめながら動かしている。

暫くして、ボクを見ると、少し怒ったような様子で、距離を詰めてきた。


「……おい、メガリス。

 アタシを、一体――どうしてくれた(・・・・・・・)?」


 ……さて、どうしたものか。


『……フルカ、鏡を』


きらきらと目を輝かせたフルカが、彼女(セタ)に小さな手鏡を手渡す。


彼女(セタ)は手鏡を覗き込み、()を見開き、そのまま[一時的機能停止(うごかなくなる)]。


ボクは、出来る限り{神妙な顔つき}を作り、セタの手を握る。


『――つまり、こういうわけなのです。

 その、[女神の眷属神(われわれ)]は――


 どうしても、[女神の似姿(こんなかたち)]として()創造されてしまう(なってしまう)ようなのです……』


彼女(セタ)は沈黙を続ける。

女神と同じ顔(きれいなかお)は伏せたままだ。


『……セタ?』


左手(・・)で顔を覆い、すっと小さく気体吸入する(いきをする)彼女(セタ)


その口元は、どこか歪んでいて。

――笑っている(・・・・・)ように、見えた。


「ぷっ――ふ……ははははははッ!!!」


『 !? 』

「「 !? 」」

[* おや――? ]


突然、セタが笑い出した。

だが{狂気}は感じられず、どちらかといえば{狂喜}に近いものだ。


――いや、寧ろ。これは――

{怒り}と{希望}――?


「ハ――

 ……ふぅ」


『[確認:問題の有無(だいじょうぶですか)]、セタ?』


「――ああ、大丈夫だ。メガリス。

 ただ……あんまりにも可笑しかった(・・・・・・・)んでな」


『……可笑しい(・・・・)?』


「ああ、可笑しい(・・・・)ね。

 よりにもよって――[女神の顔(このかお)]とは。


 ――良い(・・)悪くない(・・・・)。[最悪の皮肉(さいこう)]じゃないか!」


『……!』


笑み――{獣のような(・・・・・)}。


己自身(ボク)とも違う、女神(ヤツ)とも違う。

彼女自身(・・・・)の、表情(かお)


それは――即ち。


[確立した一個自我(ことなるもの)]


たとえ女神の顔(おなじかお)であろうとも。


[近似別解の例示(ことなりうること)]


[近似値(にて、ことなるもの)]


ならば――そう。


『――なるほど。

 たとえ仇敵の顔(おなじかお)でも――貴女は、貴女なのですね』


「――ハ、そりゃそうさ。

 それと、この顔(・・・)なら、一つ楽しみ(・・・)が増えたぜ」


『――と、言うと?』


同じ顔(このかお)で――

 女神(アイツ)一泡(・・)吹かせてやろうじゃないか。


 なあ――同胞(メガリス)?」


素敵な着想(アイディア)に、ボクも{悪戯っぽい笑み}を意識して応える。


同意(いいですね)――同胞(セタ)


【女神の顔で、女神に挑む】


一つ、するべきことが増えた――

――【生きる】ための因子(こと)が。


そして、どうやら。

ボクは――


――声を出して、笑っているようだった。



――と。


「――その……メガリス?」


ヘルの声。

いけない、少し――[夢中になっていた]ようだ。


『はい、ヘル。

 失礼をいたしました』


「いや――いい。その、なんだ。

 盛り上がってるところ、済まないが――」


――ああ、そういえば。ボクは――彼女(・・)を。


「早速、彼女を――私達に、紹介してくれないか?」


――紹介(そう)しなければ、いけなかったのだ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ