6話【歪】
『――伏せて! 来ます、何かが!』
咄嗟に、そう叫ぶ。
「「!?」」
応じて、二人が身構える。
腰に帯びた剣、背負った長物。
己の持つ武器に、手をかけて。
ああ、戦士よ。
彼女らも理解しているのだ。
――戦闘が、始まることを。
――〓■〓■〓〓――〓■■〓〓――......〓■〓――!
空間が割れ、裂け、大口を開ける。
ぽっかりと空いた黒い●の中から。
毒々しく、禍々しく、ヌタヌタと黒光りする。
恐ろしいほどに捻じくれたものが、ぬるりと姿を現した。
「長蟲!? こんな所にまで――」
――巨大な、あまりにも巨大な蟲。
総体としての形状はおおよそ百足に似る。
頭部より伸びる鋭利な大顎は、鍬形や髪切虫を思わせる。
胴部に生えた無数の脚は、曲がりくねった棘に覆われ。
触れるものを容易に引き裂くだろう。
その呼気は強烈なまでに臭気を放ち、周囲の岩壁を焼き溶かす。
しきりにギチギチと歯を擦り鳴らす様は、怒り、苛立ち、あるいは憎悪の色を匂わせる。
後背部より垂れる一対の翅は恐ろしく退化し、最早その意義を為せはしまい。
何かを磨り潰すように、ジィリ、ジィリと、ぞっとする音色を奏で続けていた。
絵に描いたような怪物。
それは、真っ赤な目をギラつかせ。
恐ろしく不快な、咆哮を上げた――
[種別:怪物][巨大蟲][有毒][仮説:空間移動能力][多脚]
[分類・小情報の添付...処理]
[――認識分類:敵性]