表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/314

62話【かつて虚空に放たれた者ども】[side:dpl]

『【赤熱剣(ヒートブレード)】!!!』


高熱量を宿したボクの短剣(みぎて)が振り払う。

――だが、其れは――


『ッ!! すり抜けて――!!?』


――通り、抜ける。


切り裂いたはずの水色の球体はその動きを止めることなく、ボクを目掛けて突撃を続ける。

何の魔法か分からない(・・・・・・・・・・)が、まともに食らっていい筈もない――!


全身分離(パージ)ッ!!』


どうせ分身(こちら)は全身鉄血(ラーヴァメタル)だ。派手にやるとしよう。


ボクは頭部や胴体までも切り離し、球体の射線から完全に逃れる。

どんな攻撃だろうとも、当たらなければ無害もいいところだ。


――そう、当たらなければ(・・・・・・・)


『な――!?』


頭部後方(はいご)から、泡沫音(みずのはじけるおと)

続けざまに、全部位(ぜんしん)に激しく撃ちつける、水流(みず)の衝撃。


『――そういう魔法(ワザ)、ですか』


恐らくは水撃爆弾(アクアブロー)のような攻撃。

やっていることといえば、水風船をぶつけることと相違はない。その延長線上のものだ。


シンプル故に、その対処は難しい――その類いと見て、まあ間違いないだろう。


『ですが――』


分離全身部品(ボク)機体(からだ)を元通りに組み直す。

もちろん、何処にも。瑕疵(きず)一つ――無い。


損傷皆無(むきず)――ですよ』


軽い挑発、相手(・・)に対しての。


何らかの反応が得られれば良し、無ければ別にそれで良い。

愛すべきは蓋然性(プロバビリティ)。要は心理戦(・・・)なのだ。


心理――そう、この相手(・・・・)に、心理(それ)があると仮定(・・)して、だが……。


いまボクの()の前に居る相手(・・)は、ヒト型生物(ニンゲン)だ。

少なくとも、そう見える生き物(・・・)だ。


言葉は一言も発しない。

対話の余地の有無はともかく、意志や思考の有無は戦闘(たたかい)に於いて無視できる要素ではない。


――情報が少ない。

いや……そんなことは、捕獲さえすればどうとでもなるだろうか?


『ッ!!』


(スピア)状の長柄武器(ポールウェポン)による刺突。

赤熱剣(ヒートブレード)】でいなし、巻き込み、穂先を逸らす。


高熱による切断は生じない。

恐らく、熱に強い性質のある素材を用いているか、何らかの手段で保護しているかだろう。


破壊するのなら、やり方を変える必要がある。

……だが、別段。武器(それ)を狙う必要性など、まるで感じていないのだ。


『――!』


ボクは勢いそのままに突進してくる相手の懐に潜り込み――


『【掌中電撃杖スタナー】!!!』


左腕部(ひだりて)に仕込んでいた、電撃銃(スタンガン)めいた非殺傷兵器(ノンリーサル)を――

――思い切り、殴りつけるように叩き込んだ。


――〓■〓〓――■〓!!


絶叫、振動、苦悶(・・)の表情――推定だが。

おそらく、効いている。


『[出力値の最大化]――』


――なら、もっとだ!


――〓■〓■〓〓■〓〓――〓■!!!

〓■――......


()が途切れる。


ヒトであればこのまま。

気を失い、崩れ落ち倒れる――


『……!!?』


――筈もない、か。


左手の手応え(・・・・・・・)が、消える(・・・)

それどころか、いま戦っていた相手(・・)姿()さえ影も形もない(・・・・・・)


何処へ消えた――虚空(・・)へ?

――否、そうであればボクも虚空に引きずり込まれているはず。


目に見えるものは変わらない。

先程まで戦っていた、やけに開けた(・・・・・・)遺跡の一角だ。


あるものはただ、ボクの造った簡易寝台(ベッド)のようなものと――


![ ――は、ァハハハハハ!! ]i


『!!!』


簡易寝台に眠っていたはずの少女が起き上がり、酷くノイズの混じった笑い声を上げている。

――どちらだ(・・・・)? 可能性としては、最初から(・・・・)――


![ あの程度のカラダじゃ, やっぱりムリがあったカナー. ]i

![ ま、同じコトだよね. こっちでヤればいいんだから. ]i


独り言らしき言葉を奇妙な発音(イントネーション)で捲し立てる少女。


……内容からの[推論:別の身体から移動した]?

憑依系能力……あるいはこちらと同じような[端末]の別個処理か、


――であれば、先程の人型生物(あいて)と、この少女は……?


『――同一人物(おなじもの)、と』


――であれば。


『【赤熱剣(ヒートブレード)】――』


――敵、そういうことになる。


![ ァハハハハハ! もうヤル気? 気が早いなー. ]i

![ 流石は我らが――〓〓(めがみ)サマ! 今度コソ(・・・・)――逃さない(・・・・)!! ]i


『――!!!』


やはり、ボクを女神(あのやろう)と誤認している――!

となれば、女神(やつ)について――少なくとも、何か(・・)を知っているに違いない。


この場所へと引きずり込まれたのは偶然か、この女性の意図か。定かではない。

可能ならば、このまま会話で情報を収集したいところだが……今の状況では難しいだろう。


興奮状態のまま口走った言葉が、正しい情報であるとはとても思えない。

……となれば、予定通りいくしかない。


――捕獲し、情報資源を鹵獲する。


故に、交戦状態は続行しなければならない。

敵対者(てき)は、戦意旺盛(やるき)だ。


まず、完膚なきまでに(・・・・・・・)叩き伏せねば(・・・・・・)ならない。

でなければ、情報など得られないだろう。


……さて――それと。

もう一つ、言うべき台詞(・・)があるじゃないか。


『[否定(いいえ)]――ボクの名はメガリス、ただの兵器(たたかうもの)です』


赤熱剣(みぎて)を向け、否定する。


少なくとも、ボクはあの女神(やろう)ではない。

それだけは今のところ、確信しても良いことだろう。


女性はどこか楽しげな笑みを浮かべると、小さく息をつく。


![ ふうん――まあいいや. ]i

![ アンタがどう名乗ろうと, アタシにとっては同じコト. ]i


![ アタシは【〓〓〓=〓〓(セクターナ・ヒーベア)】! ]i

![ 〓〓(みなぞこに)〓〓〓(とらわれし)(かつて)〓〓〓〓〓〓〓(きよらなりきもの)だ! ]i


それ(・・)が名乗りを上げると、何処からともなく水が溢れ、流れ、留まり――


――戦場(そこ)は、[仄昏き水底(しんえん)]と化した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ