33話【自由な身体】
[スリープモードの解除]。
丸窓から見える景色は、相も変わらず蒼い空。
夜は明けたのだろうか、それとも此処は常昼の世界なのだろうか。
無事に虚空は抜けられたのだな――
安堵の声を、漏らす。
右の手を握る。
――動く。
左の手を伸ばし、広げる。
――動く。
意を決して、寝台を降りて立ち上がる。
――問題なく、動く。
『――良かった……』
自由に動く、ボク自身の身体。
とても良い、素晴らしいほどに。
やはり、嫌だ。
身一つ動かせぬ伽藍中も、足掻き方さえ理解らぬあの虚空も。
そして、この身体を失うことなんて――もっと嫌だ。
【身体を大切にして、生きていこう】
いま、初めて――そう、思った。
ふと部屋の壁には大きな鏡が掛けられていることに気づく。
そして、それに映された、自身の姿を見る。
白い肌。
長い紫色の髪。
膨らみかけの状態が保たれた乳房。
毛一つ付けられていない全身の肌。
しなやかで柔らかさをもった足。
腰から背中にかけてのラインはしなやかで。
下腹部には、ヘソ状の窪み――?
…………。
一糸纏わぬ艶姿だ。
カァァと、頬に赤みがさしたのを感じる。
思わず、手が隠すべきモノを隠す位置へと動いてしまう。
これではまるで本物の少女だ。
兵器に、機械に。性別なんて在るはずもないというのに。
それにしても。何故、服を着ていないのだろうか。
……いや、修理の際に取外したのだろう。そう考えれば、自然だ。
そういえば、ヘルは何処へ行ったのだろう。
部屋の中に黒い箱の姿は見えない。
というか、そもそもヘルは一体全体どうしてあんな姿になっていたのだろうか。
まあ、十中八九は魔法によるものなのだろう。
何でもかんでも魔法のせいにしてしまうのは――何というか。癪、だが。
もう少し詳しく聞いてみなければならないだろう。
機体も魔導兵器である以上、魔法によって動いているのだろうし。
きっと何か、役に立つことが見つかるだろう。
聞く事といえば、まだまだある。
[内包世界][奈落][虚空酔い][虚空領域][大機械燈台]……それに――
――と、その時だった。
「メガリス! 起きたのか!? 大丈夫か? 体の具合は――」
扉の開く音、慌ただしい足音、入ってくる少し冷たい通路の空気、ほのかに漂う香り――おそらくは、香水の。
……部屋の中へと入ってきたのは、いつもと違った衣装を着た、ヘルだった。
――一糸纏わぬ裸体のボクをみて、{しまった!}というような表情を浮かべている。
頬が、濃い赤色へと染まっていく。
人工循環器が早鐘を打ち続ける。
ああ、またか。
また、こんな姿を晒してしまったのか。
いくら心を、感情を持つにしても。
もう少し加減してほしかったな……。
ある意味でコントロールできない、機体の反応とは裏腹に。
電子頭脳では、後悔と嘆きの思考が疾走する。
かろうじて、発声機から出た言葉は。
『~~~ッッ!!!!???』
声にならない、悲鳴だけだった。




