表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

308/314

297話【もう一つの戴冠者】

「なあ、相棒!」

「メガリス、さん――」


『――どうしました、セタ、ルゥ?』


艦内(なか)に残した機体(ボク)に、真剣そうな顔をした二人が話しかける。

要件(・・)は――理解(・・)している。


『――いいのですか?』


言外に、{王に記憶を奪われる危険性}を匂わせる。


「メガリス、あんたと――あの娘(アルル)戦ってるんだ(やってんだ)

 アタシらだって、[対王戦闘可能(やれる)]さ!」


「そう、だよ! メガリスさん――

 わたしたち、にも――てつだわせて!」


『二人とも――』


――懸念(けねん)は、無いわけではない。


いま[大地と空(われわれ)]が、【王】の侵攻に抵抗しうるのは――

――それだけ[強大な神格(おおきなもの)]を取り込んだ、その結果であるという、仮定。


――[存在]としての強度(きょうど)


それが不足(・・)していれば、いかに眷属神(かみなるもの)と言えど――

――消滅(しぬ)、十分に考えられる可能性(こと)だ。


海と境界(ふたり)艦外(そと)に――【概念】の戦場に、出すべきなのだろうか――


「メガリス、さん」


『――ルゥ』


「これは、きょうかい(境界)を、きめる、たたかい。そうでしょう?」


『――!

 ルゥ、それは――』


ルゥのことを、【境界の神】だと評した事がある。

彼我(ひが)境界(きょうかい)領域(あれら)領域(それら)定義づける存在(さだめるもの)だと。


――だが、それは。


「わたしは、[境界(それ)]

 わたしが、そうきめたから」


彼女自身が、境界を敷く――(すなわ)ち。


「だから――メガリスさん。

 わたしが、[この世界]と、[そうでない世界(もの)]を、さだめてみせる」


[王の侵攻(せかいのしょうめつ)]に、直接立ち向かうということ。


『ルゥ――』


――正直に言えば、考えなかった(・・・・・・)わけではない。


王が世界(・・)という境界(・・)を侵す存在(もの)である以上。

境界の眷属神(それを、さだめるもの)】の存在は――


――有効打(・・・)

(ある)いは――[切り札]となりうる可能性がある。


……仲間を失う危険(・・・・・・・)を、天秤(てんびん)にかけるべきか?


もう少し――思考を続ける必要がある。


――おそらく、セタの方は問題ない。

仮に(かのじょ)艦外(せんじょう)に出すとなれば――


奈落(そこ)は、()大地(・・)と――()が満ちることとなる。


地空海(それら)は、天地(いままで)よりも遥かに強固な【世界】として成立するだろう。


海は照らされ風を呼び、波となり大地を変容させていく。

海風はやがて天へと至り、雨となり大地を潤す。


循環(サイクル)は世界に【時】を与え、要素(エレメント)は世界に(システム)を与えるだろう。


それによって現出する(あらわれる)、[ボクらの仮初の天地(ちいさなせかい)]は。

【王】に(あらが)うに足りる、[強固な世界]へと変容するだろう。


(セタ)は――出撃させるべき(だすべき)だ。


だが、境界(ルゥ)は――そうだ。

境界(きょうかい)とは、得てして[変化するもの(うつろうもの)]だ


……悪い想像(・・・・)を働かせることもできる。


境界(それ)を失った瞬間――成立していた拮抗(きっこう)(くず)れ。

何もかも王に呑まれる(・・・・・・・・・・)――そんな可能性(ビジョン)も見える。


――ならば、どうする(・・・・)

単純な話(・・・・)だ――


強化(・・)すればいい、存在というもの(そこにあるべきちから)、それ自体を。


用いるべき手段(きるべきカード)は――未だ(まだ)、残っているのだから。



『――メシュトロイ』


『▼ ……は? 』


ここに至るまで、ずっと――素知らぬ顔(・・・・・)を続けていた、巫女(メシュトロイ)に声をかける。


幻獣()を貸してください。

 ――ひとつ、いい考え(・・・・)が浮かびました』


『▼ なんなんだよ、いきなり何を言って―― 』


いいですね(・・・・・)?』


少し大地(かのじょ)に似た()で――にこりと、微笑(ほほえ)んでみせる。


『▼ ――っ!

   ……畜生! 』


嗚呼(ああ)準備(・・)は整った――

さぁ、【王】(やつら)に、目にもの見せてやろうじゃないか!


――【幻想】の【境界】というものを――!




化身(ボク)は――睥睨する(みている)

輝き(・・)に彩られた天地(・・)に、現れた大海(・・)、そして――


――幻獣(このよならざるもの)姿(きょたい)、無限に等しい長さの境界線(せん)を。

化身(ボク)の世界を包む(せん)を、何よりも強固な境界線(せん)を。


世界蛇(オルム)にも冥府蛇(ファラク)にも等しき、我が(ボクの)世界を戴く巨獣(バハムト)】たる境界(まもりて)が、此処(ここ)顕現(けんげん)した――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ