2話【第一印象】
光が消え、ボクの眼には、二人の少女が写っていた。
一人は、腰に細剣を帯び、簡素なブレストプレートを纏った、剣士風の少女。
柔らかな金髪は少し赤みを帯びており、桃色に近い色味をしている。
キュッ、と後ろで括った髪型は、凛とした空気を纏う彼女の姿に似合っているように思えた。
そして、彼女を庇うようにして身体を前に出すもう一人の少女は、
何故か黒塗りの片眼鏡を着け、ハウスメイドのような恰好をしていた。
柔らかな栗色の髪を揺らしながらも、視線はまっすぐにこちらを見据え、油断なく様子を窺っている。
さぁ、はじめてのそうぐうだ、どんな風に接触しようか?
幸いにも、二人が二人とも結構な美少女だ。少なくとも、ボクの主観によればだが。
いきなり抱きついたり、口づけを交わすようなタイミングはとうに過ぎた。
別段そういうものが必ずしもある必要はないだろう。もう少し慎重に行くべきか。
ひとしきりの思索の果てに、ボクはとりあえず挨拶から入ることにした。
『――こんにちは』
「!!」
[喋った! どどどどうしよう、何か話した方が良いのだろうか? えええと……]といったような、焦りの思考が、見るだけで手に取るように分かる。
というか、言葉に出ている。
見た目は凛々しい騎士様といった容貌だが、不慮の事態には可愛らしい所を見せる種類の人間と思われる。
[カテゴリ:人物]ファイルには、そう記録しておくことにしよう。
そして。もう一方の反応は、というと――
「はい~、こんにちは! わたしはフルカ、フルカ・フォーカスっていいます!」
「こちらはわたしのお仕えする、エデルファイト子爵家のご息女、ヘレノアール・ヴィーディス・エデルファイトさまです! 名前だけでも覚えて帰ってくださいね!」
「ところで! こんな所でカプセルに封印されていたあなたは、どういう方なのですか?」
「人間ですか? 妖魔の類ですか? あの忌まわしいカミサマたちの仲間ですか? それとも――」
矢継早撃出す言霊弾幕。
なんと話の早いことか。幾らなんでも、少し、戸惑う。
垂れ気味の目が表すのは、内向的な大人しさではなく、人懐っこい子犬のような獰猛さらしい。
そういうふうに、記録した。
『――すみませんが、[思考処理の遅延が発生]』
……月並みな言葉だが。
状況を、整理することにしよう――