287話【そらぞらしきもの】
「――全く。
よく、飽きもせず――襲ってくるものだ」
再び、三度――現れた敵船を下し、重々しく罵る長兄。
――同感だ。
どうにも、些か――[数量頼みだ]。
この層に来て以来――既に、7隻の敵艦を[光線照射→無力化]してきた。
それらはいずれも鎧袖一触、赤子の手を捻るようなものだ。
――あまりにも、容易い敵。
だからこそ――{胸騒ぎ}を抑えられない。
[> というか、何考えてるんでしょうね王ら。 <]
「――さてな。
それさえ分かれば、対処もし易いものだが――」
――全くだ。
[最深層突入]を思えば、何らかの[習性/行動様式/他の弱点...]を集めたいところなのだが。
[接触性記憶破壊]を考えれば、迂闊な手は打てない。
――捕獲して、実験――出来よう筈もない。
[接触不能物質透過]を如何やって捕えろと言うのか。
[第一層での敵船]と同じように――残骸からの情報さえ、一つたりとも得られない。
――[対応不能]だ。
未だ何一つ――妙案は、思いつかない。
[* ――失礼、皆様方――]
――おや。
オーチヌスの、艦内放送だ。
[* 砲撃地点に到達いたしました。
――砲撃を、行いますか?]
「ああ――
――いや、待て。これは――」
遠方より――迫りくるは轟音!
敵船の砲撃か?
――否! そんな筈はない!
敵影も、飛翔体も――[一切感無し]!!
『……!』
この、音は――
『ヘル! 過重空層から――砲撃が!
――それも、[穿孔螺旋弾]です!』
「なんだと!?」
下層に――それも、[最終目的層]に――誰かが、いる――?
子爵領が把握していない他勢力の未確認船か、それとも――
――あなた、なのか――?
「総員――衝撃に備えろ、来るぞ!」
『――ッ!!』
――轟音、衝撃。
入り混じって聞こえる――消え入りそうな声。
過重力空域層に風穴が開き、螺旋とともに現れたのは――
――弾丸などではなく、〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓。
超重層を越えてきたとは思えぬ――華奢で、果敢無く――弱々しい〓〓。
――〓〓は、如何なる存在か?
そう思う間もなく、螺旋は、もう一つの来訪者を迎え入れる――!
『ッ!?』
おお、見よ! あの溢れ出る存在を! 散々に悩まされた忌々しき者共を!
――大量噴出する、【王】!
だが王は、どこか今までのものとは様子が違う――
捻れた王が――その金色を伸ばす!
〓〓に触れ――否! 握り、千切り投げ捨てる!
苦悶の声を上げる〓〓!
あの【王】には実体があるとでも言うのか!?
そして〓〓は必至に身を捩り、もがき苦しみながらも――
――ただ、艦を、見た。
「――なッ!?」
不意にかき消えて煙のように存在を失う〓〓!
だがそれと同時に! 現れたのだ、艦内に! ――〓〓が!
即座に武器を構え机上の〓〓を睨むボクらに――〓〓は、抜け抜けとこういった。
「〓〓〓〓、■〓〓〓〓■〓〓――
――〓を、助けてくれないかな……?」
酷い有様を晒す〓〓を他所に――
――艦外では、黄淡色に煌めく[骨めいた金属実体]が荒れ狂っていた――




