表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

275/314

264話【アビス】

ひどく{深刻}な語調(トーン)、[未所有情報(みちなるもの)]の[名称()]。

どこか名状(めいじょう)しがたい[奇妙な感覚(おぞけ)]に、(こた)えるのは静寂(しじま)だけ――


『▼ ――奈落(アビス)、だと!? 』


大声(・・)で、叫んで見せる巫女(メシュトロイ)

どこか大仰で、わざとらしく――少しばかり、胡散臭(うさんくさ)い。


知っている(・・・・・)のですか、メシュトロイ?』


『▼ ――いいや(・・・)

   知るもんか(・・・・・)、ちょっと{驚いて}みせただけさ。 』


まさか(・・・)

馬鹿馬鹿しい――そんな筈が(・・・・・)あるものか(・・・・・)


『――{虚偽(うそ)}、ですね。

 あなたは、[奈落なるもの(それ)]を、知っている』


『▼ あー……もう、やりづらい(・・・・・)な畜生。 』


――とはいえ。

こちらは何一(なにひと)つ知りはしないのだ、[奈落という場所(アビスなるもの)]について。


情報(・・)が、必要だ。


[* お嬢さん(レディ)電脳書架(データベース)から[必要量の情報(いくらか)]を融通できますが?]


――ありがたい話だ。


『お願いします、オーチヌス。

 ――ですが、まずはもっと[表面的な情報(かるいもの)]を』


[* 分かりました。

  では――まず、[渡空挺・潜空艦(われわれ)]が[空]とよぶ領域について。

  (そこ)に、[到達不可能な領域(はてというべきもの)]が存在することはご存知ですか?]


『――否定(いいえ)

 虚空さえも越える[(あなたがた)]に、[到達不能領域(そんなもの)]があるのですか?』


[* ええ、恥ずかしながら。

  [天方限界(エーイグジール)][遠方限界(アウツィオス)]など幾つかありますが――

  ――奈落(アビス)は、その中で最も身近なもの(・・・・・)です]


身近(・・)、というと――』


[* そのままの意味(・・・・・・・)です、メガリス嬢。

  単純に――[到達するまでの距離]が短い(・・)のですよ、奈落(そこ)には。

  [簡素な渡空挺(なみのふね)]でも、[半周月もかからない(すくにたどりつけます)]よ]


『――なるほど。

 では、オーチヌス。奈落(そこ)には、何がある(・・・・)というのですか?』


[* そうですね、何がある(・・・・)と、いうよりはむしろ――]


『――あるはずのものが無い(・・・・・・・・・・)、そういうことでしょうか?』


[* そう表現するのが妥当でしょう。

  (もっと)も、無いのは[あなた方もよく知るも(なにもないそんざい)の]なのですが]


『――!

 【虚空】――』


[* ええ、その通りです、お嬢さん(レディ)

  なんとも哲学的(・・・)な話ではありますが。

  奈落(そこ)には【虚空(・・)】が無く――【(それいがいのもの)】に、満ち溢れている]


――[大気(アトモスフィア)]!

空気(あるべきもの)虚空(ありえざるもの)が入り交じるこの空域(そら)で、一方の均衡(バランス)を欠いたのであれば――


[* 奈落(そこ)至ったあらゆる存在(もの)は――

  凄まじい圧力(おしつぶすちから)を受け、(またた)く間に(つぶ)れてしまうといいます]


――深海(・・)めいて木星型惑星(ガスじょうわくせい)の中心めいて、破滅的超重力(・・・・・・)(さら)されること必至!


何たる脅威(・・)、何たる驚異(・・)か!

ならば、辿り着く方法(・・・・・・)など存在し得ないというのか――?


[* ――ですが、現時点で算出される座標は[最終臨界点(そうなりうるばしょ)]より僅かに上方にあります。

  それでも、現状の艤装(そうび)では到底たどり着くことは不可能でしょうが――]


『!』


[* 外部装甲の換装、内部構造の補強、加えて多重の魔法障壁の付与――

  ――十分な改修を(ほどこ)せば、当艦(わたし)は必ず、皆様を[該当地点(そこ)]まで送り届けてみせましょう]



――ある種の{自負}と{誇り}、強い{挑戦心}を以て。

(かれ)は、力強く――[成功]を、確約してみせた――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ