23話【シークエンス:出撃】
投影皮膜一杯に、艦外の状況が投影される。
「……接敵まで保って数分、といったところだ」
艦後方より迫り来るは、鞭のようにしなる、横倒しの柱のような物体。
即ち、紛うこと無き――【触手】
それが、空中にポッカリと空いた●
無数の●から、何本もの触手が伸ばされている。
靭やかにヌメリを帯びた強靭な脚は、獲物を狙って真っ直ぐに先端を伸ばしている。
複数の穴、であるならば、縄状の肉体を持つ群体生物なのだろうか?
――否、ボクは既に、それを知っている。
この触手は、虚空部分にある、【本体】が操っている。
即ち。
触手の先の虚空孔の奥に居る、本体こそが。
艦他乗員三名の敵。
記録名称。
【虚空海魔・奇想旋曲体】
『――討ち倒します、ボクの行く手を阻むなら』
「では、策はあるのか?」
『はい、一つだけ。ボクにしか出来ないやり方が』
「……やれるのか?」
『無論、損なう事など有りえません』
「……一つだけ、お前に懇願する。
[絶対に、死んではならない]――いいな?」
「[命令として承認]
メガリス、撃するが為に出立します」
[*[ハッチの開放]]
足元に幾何学的な文様が現れ、甲板への道が開かれる。
ボクは右手の【造兵廠】を展開しつつ、甲板への瞬間移動通路を抜ける。
吹き付ける風、どこまでも広がる青い空。
勢いあまり、上の空へと身体が跳ねる。
遍く天地の全てを覆い尽くす、青、蒼、碧――
――いけない。そんな場合ではない。
すぐさま姿勢を整え、真下を目指す。
ボクが、彼の甲板へと降り立った時。
クラーケンの触手が、艦尾を捕らえた――!




