225話【テッセラクトの身喰蛇】
『――【多層偏光分散鏡】!!!!』
――然り!
鏡皮装甲を幾重にも折り畳み重ねた多層構造!
秘匿記録から[指名作製]した、[対・熱線機構]!
言うならば――そう!
[屠龍兵装_1]!
見よ! 光線の有様を!
乱れ飛び跳ね回る哀れにも不埒で無様な乱射光!
嘗て整然と疾駆した大熱線であったことなど忘れさり、四方八方十方構わず淫らに飛び回っているではないか!
あまつさえ射出口のもとへと帰ろうと、竜首をぶち抜く光さえ出る始末!
嗚呼なんと、何たる無様か!
最強機の名が嗤わせる!
こんな程度であるものか!
乱れた光で全てを照らせ!
九頭邪竜の全体を見せてみろ!
――出来るものなら!
『▼ なんだ……?
おい、メガリス!何をした!? 』
『謙遜。
ただ――撃ち返してやったまでです』
『▼ さっきの光線か……そっちも大概、何でもありだな。 』
『――お互い様、ですよ。幻獣王』
敵側の混乱に乗じて会話を行う。
次に聞こえてきたのは――セタの声。
「――なあ、メガリス。
何処へ飛べばいい?」
――ああ、全く――
話が早い――
――助かるものだ、本当に。
『応答、セタ。
――現在位置から下方へ。
少なくとも、首が繋がっていることは確認できたので』
「応よ!
――相棒!」
落ちる、堕ちる、墜ちる。
流れるままに、降り注ぐように。
天地逆転せし昇り龍は、稲妻めいて大河を下る。
流れ流れて、たどり着く果て。
乱れ飛ぶ乱光の、迷い込む最果て。
――然り。
龍の姿形が、鮮明に映し出されるほどの――光量。
嗚呼。
見よ、見よ、見よ――見よ!!
其の悍ましき形状を――白日の下に晒せ!!
八竜頭は遥か上空! 伸びゆく首には地獄の氷柱めいて刺刺しき金属版! 下り際に見掠めた、珠を握る鉄腕!
ならば龍胴は何処より生ずるか――其の根源を見よ!
竜頭の終着点なれど、其は蛇尾にあらず!
巨大な――然り、途方も無く巨大な――[輪環体]!
正八胞体めいて内側より外側へと蠢き、身喰蛇めいて自己破壊再生を繰り返す極微小金属の源泉!
編み手の泉が如く巨木たる竜蛇を養い、
知恵者の泉めいて代償を求め続ける混沌たる虚空!
その円環より――竜首は虚空へと伸びゆく!
――ああ、さてはて――
何処に在りや、[九頭目の残骸]――
『――!』
――やはり。
――やはり――?
――やはり、そうなのか――?
流動し続ける円環を見よ。
一点、一箇所、一地点――流動なき箇所が、ひとつある。
そこには――嗚呼、やはり――
『――ッ!』
――【"識"たる楔】が、突き立てられていた――




