223話【生命】
『▼ こんな時に――なんのつもりだよ! 』
巫女は、じとっとこちらを睨む。
僅かに滲み出た{歓喜}を隠すかのような物言いで。
――何か、意図を読み違えているのだろうか。
『いいえ、貴方の神性なるもの――
――それについて。まだ、何も聴いていなかったので』
『▼ ッ! 』
再びの{羞恥}、幾許かの{怒り}、僅かな思慮を経て、巫女は捲し立てる。
『▼ そんなの答える必要は――
……あるな、畜生ッ!』
僅かな間にひとしきり逡巡してみせると、こちらを指差し向き直り。
{分かりやすいように、あなたの言葉で言ってやる!}などと前置き語り始めた――
『▼ ぼくが、虚空に願ったのは――
――{ぼくを殺した女神への復讐}!
そうして創り変えられた神性は――!
―― 女神そのものである――
【大地】を蝕む存在!
つまり――ぼくは!
妖魔、怪異、化生、幻獣――理の外にある存在ども!
――そう、【魔物】たちの王!
在り得ざる生命を産み落とす、【生命の神】!!
生み出し、呼び出し、操り、時に乗り移り――【支配】する神性!
……そんなところさ、くそメガリスっ! 』
『――十分です、巫女野郎。
ただ、一つだけ――』
――そう。
生命体への――憑依――?
『その能力で、如何にして当機本体を簒奪したのです?』
『▼ ――っ。 』
息を呑み、言葉を失い、黙り込む。
されど、それも僅かな間のこと。
『▼ ――やっぱりだ。
あなたはそれすら気づいていない。 』
――気づいていない?
それは――如何なる意味で――?
『▼ 機体が何で出来ているのかも。
機体がかつて[如何なる存在]であったのかも。』
『……それは――』
――機体は――ただの、機械では――ない?
『▼ ――答えても、いい。
だけど今は――そう、[単に混乱を齎す情報]だ。 』
『――いいでしょう。
聴かせてもらいます、敵性体撃滅の後で』
――ああ、全く。
自分のことのくせに、知らないことが多すぎる――
『▼ ――それで?
わざわざ情報提供したんだから、[思いついた事]あるだろ? 』
『――当然。
まず、最初に――』
――ッ!
言の葉を伝えながらも気付き、応じねばならない。
然り、これは――[敵機の移動]!
遥か遠方より――接近! 竜首――二つ!
距離を詰めてきたか――急がねば!
『▼ 冗談だろ……これ以上、ぼくの中に―― 』
『――当然、必要なことです』
『▼ ――畜生ッッ!!』
ありったけの罵り言葉を撒き散らしながら、メシュトロイが巫女服の前を開いていく――
――ああ、然れど!
胴体があるべき部分には、さながら●めいた――裂け目!
裂け目より光が――虚空に在り得ぬ光が注ぐ!
裂け目の先に広がるは、空間!
嗚呼、来たれ――生命よ!
最も近しき位置に存在する、神なるものよ!!
裂け目を超えて――〓〓が虚空に至る――
「――さっぱり、分からんがねぇ……」
『!』
「アンタが呼ぶんなら――アタシが必要、なんだろう?」
機竜の支配する無限大の虚空に、もう一柱の海龍が出現した――




