188話【鎖】
――〓〓、か……ッ!!
虚空に、はっきりと観測できる――その姿!
それは壺のような、亀のような、ひどく歪んだ球体のような――
――あからさまに、[格納・搭載可能な]形状をしていた。
『――!』
何らかの音――あるいは、動作。
――[発艦/射出行為]?
そう――
単純に考えるのであれば、壺球は長蟲達の親玉もしくは母艦のような存在だろう。
だが、もし――壺球が――
――それらしく見せるための、罠であったとすれば?
『――決まっている』
――そんな稚拙な誤魔化しなど――
『――踏み破ればいい!』
両腕の造兵廠を全開放し、対虚空兵装の[内側→外側浸透]を書き換える。
『[鉄血全放出]!!』
兵装をすり抜けて、鉄血が溢れ出す!
虚空に――鉄血が出力されていく――
[検索項目]...
――必要なものは、ひとつだけ。
壺球を、確実に[破壊]するための――楔器だ!
『――名付けるのであれば――』
高速展開された鉄血は、瞬く間にその兵器を創り出す。
望むべきものを、行使すべきものを。兵器が何であろうとも。
『――ッ』
兵装の外部、籠手に握る武装から――酷く捻れた感触を得る。
――ああ、〓〓は――
――果たして。
触れても、[攻撃に用いても]、[一切問題皆無]な存在なのか?
――然り!
〓〓は既に、当機の活用可能な兵装で、活用を躊躇う理由などひとつもない!
活用可能な存在は、最大限活用せねばならない――
――そうだろう?
……そうだとも!
思考中枢に過る一抹の不安を跳ね除け踏み付け薙ぎ払い――当機は、咆哮する。
『即ち、[刻字器]!
――【鉄鎖楔・自在無尽】!!』
――そして。
握った鎖が暴れ出す。
無数に別れた鉄鎖の先端には、【 楔 】
鎌首擡げた多頭竜めいて、楔は壺球に襲いかかり――
『……!』
――蟲壺は、"破壊"された。
小さな楔の無数の瑕疵から連鎖的に"破壊"が生じ、砕け壊れて崩れて散って、虚空に飲まれて虚無となった。
断末魔など、聞こえない。
……聞こえる、はずもない。
『……』
――さて。
壺球が[親玉/母艦]であれ[無関係]であれ、変化を確認しなくてはならない。
確認は、何より――[遺跡大広間]へと帰還することだ。
親玉の撃破であれば、追加の長蟲は絶たれるだろう。
無関係だったとすれば、他者の支援に向かえばいい。
長居は無用だ――戻らなければ。
幸い、虚空突入時の●は未だ存在を許されているようだ。
辛うじて、そう認識できる。
――消えかかっている?
そうであれば――急がねばならない。
当機は、耐虚空飛翔翼を翻し――
――●へと、手を伸ばした――




