187話【乱戦】
『――【赤熱七叉鞭】!!』
複雑に枝分かれした連接剣が絡みつき、三体もの巨大な長蟲を縛り焦がす!
――浅い!
切断にも焼切にも至らず、長蟲共は動けずとも未だ健在!
やはり赤熱剣だけでは火力不足か、[初戦時]のように最初から――
『――[鉄血・追加放出]!』
空いている左腕側から鉄血を大量出力し、もう一つの兵器を創り出す!
『【近接徹甲槍弾・蒼天】!!!』
瞬く間に産み落とされた蒼穹の刃は、小型化された射出機構に弾き出され――
――三体の長蟲を、突破貫通する!
『――!』
貫かれた長蟲どもはギチギチと不快な音を立て――爆発四散! 跡形もなく虚空に消える!
――[前回交戦時]とは異なる消滅方……!
居るのか、何か?
一瞬、逡巡し――切り捨てる!
――後だ! 今は――
『――噴進ッ!』
味方の、支援をしなければ――!
入り口からさほど遠くもない、妙に広い部屋。
よもや、部屋が魔物の巣窟と化しているとは!
分断され、眼前には――大口を開けた●。
他の面々も同様だろう、【魔物】に――襲撃を受けたのだ!
一刻も早く、他の者への支援に向かわねばならない。
跳躍し、空中――大部屋の様子が、よく見える――
「〓_〓_〓_〓_〓_〓-〓-〓
――〓〓〓_〓-〓-〓_〓-〓!!」
駄津めいた鋭利な影生物が――
――群れをなし、主を囲う7体程度の長蟲を[穴だらけ]にする!
宛ら無尽蔵とも思える圧倒的な物量弾幕は、新たに迫る長蟲共などものともしない!
――やはり、セタは強い。このままなら――暫くは、耐久可能だろう。
ならば――次だ!
「せやー!」
少しばかり気の抜けた台詞と共に、魔法の弾丸が長蟲を穿つ。
――そして、その反対方向にも、貫かれた長蟲!
いかなる方法で、同時別方向に――その答えは、彼女の手中にある!
「そちらもですねっ!
やぁ――!!」
二本の――小型術式砲剣! 切り詰め砲身の斧付き銃剣!
二丁拳銃めいた武装による、銃剣術を交えた近接格闘術!
絶妙な間合いから撃ち抜いては断ち切り、反撃を受ける前に高速離脱!
射撃を加速や姿勢制御に用いる合理さは宛ら機械のようで、最精鋭と呼ばれるだけの技術を感じさせた――
――充分! そう言っていい筈――!
ならば、次は――
「{"わたしはあなた――あなたはわたし――
わたしのこえは――あなたのことば――
あなたのこえは――わたしのうた――
うたうわ、うたうの――うたわせて!
わたしたち、ふたりだけのうたを――"}
――鳴術式っ! 【双子星の二重唱】!!」
「――[術式強化]――
{"其は白刃――凍え研がれた風に舞い、触れ中て裂き断つもの也。
其は夜嵐――くるり巡りて空々回り、訪る木枯を先触るもの也。
其は収穫――さんざざざめき囁いて、ただ生命を刈取るもの也。
其は終焉――即ち、此より身罷る世界。冬枯れよ、来たれ――"}
――散術式、【風切る落葉】!!」
彼女たちの周囲に鋭き葉刃が大量展開され、竜巻めいて乱舞する!
一つ二つなら物ともしない長蟲の外殻だが、これほどの数に迫られれば話は別だ!
見る見る間に剥がれ削られ切り離され、一つ一つその生命活動を絶たれて消えてゆく――
――流石、といったところだろうか。
これでは、出る幕はないだろう。
――となると。
『――?』
――おや?
ルゥの周囲は――長蟲共が近寄ろうともしていない。
何体か分身体注入したか、それとも何か別の能力を使ったのか――
――どちらにせよ、問題はなさそうだ。
もし問題が存在すれば、ルゥなら通信してくることだろう。
ならば――
『――●、ですね』
当機は部屋の片隅――長蟲一匹通すのにも苦心しそうな小さな●を見る。
――●からは、長蟲が出てこない――
どこか、怪しい。
長蟲大量発生を起こしている奴の隠れ場所として、果たしてどの程度か?
――試す価値は、ある。充分に。
『――【対虚空兵装】!』
全身を鉄血で鎧い、小さな【復讐鬼】めいた黒色鎧槍武装へと変わる。
『噴進・最大出力ッ!』
――元凶を、断つ!!
当機は、刹那の間さえ惜しむように。
[或いは罠の可能性]●の中へと、突入――突撃していった――




