表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/314

185話【ふりかえり、まえをみて、そのさきへ】

「……そうか。

 いや、無理に言わず(・・・・・・)ともいい。

 お前が、話してくれる気(・・・・・・・)になったら――」


『――当機(ボク)は』


「!?」


ええい、かまうものか(・・・・・・)――

……ヘルの言葉に、応えられない(・・・・・・)のは――()だ。


『――いいえ、ボク(・・)は。

 ――【この世界(・・・・)】の人間(ニンゲン)ではありません』


「え!? は――メガリス?

 お前は、何を言って――?」


『以前、ヘルが教えてくれた概念(がいねん)です。

 ――【転生者(・・・)】と』


「!!」


{まさか}、{そんな}、{実在したのか}――{驚愕}を示す彼女(ヘル)の表情。


『ボクは、女神を名乗る存在(・・・・・・・・)により、この世界に創造されました(うみおとされました)

 ――この、機体(てつのからだ)を持って』


胸元に手を当て、少しばかり俯いてみせる。


『故に、ボクには――過去(・・)があります。

 口にするのも莫迦らしい、前世(うまれるまえの)の記憶が。


 ――そう。異世界(ここではない)の記憶(、どこかの)


   〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(いみのないノイズ)


   〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(わすれてしまいたい)


   〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(きずひとつないきろく)


『言うならば、ボクは――

 世界(・・)世界(・・)を越えて、この世界(・・・・)に生まれ落ちたのです』



   〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(そんなていどのもの)



異なる(・・・)世界(・・)――!

 それは、どんな――」


『……いいえ、駄目(・・)です。

 ボクは――前世記憶(それ)を、思い出したくない(・・・・・・・・・)のです』


ヘルは自分の顔を軽く押さえ、ゆっくりと首を振った。


「……すまない。

 誓おう。私はお前に、想起による苦痛(そんなもの)を与えはしない』


『……これで、一つ(・・)

 ボクの、隠していたこと(・・・・・・・)の一つです』


少し俯いたヘルは、目を閉じ、顎のあたりに軽く触れる。


「――ああ。

 正直……予想外の話(・・・・・)だ。


 私が推測して(かんがえて)いた隠し事(もの)は、別のこと(・・・・)だったからな」


――?

そのこと(・・・・)では、ない――?


「そうだな、切り口(・・・)としては――


 ――【魔物】とは、()だと思う?」


――!

これは――


『……()のことを、言っているのですか?』


「はっきりと、言葉にすべきだろうな――」


片手を顔の横に挙げ、指を一つ一つ立てていく。


「お前の同型機(つれ)二名(ふたり)、フェン兄様の[推定:恋人(おあいて)]

 ――更に言うのであれば。私達に取り憑いたあの穢焔(まもの)も、だ」


『――それ(・・)は。

 魔物と同質の存在(おなじ)だ、と?』


「そうだ。

 【明白なる意志】を持つ、【魔物】

 つまり、【虚空】より【生まれた】、【人間】だ」


『!』


魔物(・・)は、人を襲い(・・・・)虚空へ呑み込もうと(・・・・・・・・・)する。

 それは――いかなる理由(・・)があってのこと、だろうか。


 ――もしかしたら(・・・・・・)

 意思ある魔物(かのじょら)は"魔物が人を襲う理由(それ)"を、知っている(・・・・・)かもしれない(・・・・・・)


 ――そう思ってな」


どちらかといえば、{好奇心}に近い感情。

{情報戦}や、{尋問}の意図ではなく。


――それなら。


()が、したかった(・・・・・)のですね』


「……そうだな。

 意志ある者(・・・・・)には、それが必要(・・)だ」


――然り。

そうあるべきだ。

そう出来る限りは。


『――二つ目(・・・)、ですね。

 [彼女らが、虚空由来の生物である]――と、隠していた」


「ひょっとして――まだある(・・・・)のか?」


少しばかり{冗談めかして}、{からかう}ような笑みを浮かべる。


『――まさか(・・・)


 ですが(・・・)――


 二つの話(それら)と、関連する事柄(つながるはなし)が』


「良ければ、聞かせてくれないか?」


『――肯定(はい)

 ボクを、この世界のもの(・・・・・・・)へと作り変えた女神(・・)なるもの。

 そいつ(それ)は、["虚空"の女神]である、と推測しています』


「!」


『――少なくとも。

 ボクと、セタと、ルゥ、ネールと……穢焔(あのまもの)は。

 ――同じ神格(じんぶつ)によって、創造された(つくりかえられた)ことは確かです』


「――そうか。

 ならば、やはりお前も同じ(・・・・・)ように――


 ……いいや、待て。

 それでは、まるで(・・・)――」


『――【転生者(・・・)

 異世界(どこかのせかい)で死を迎え、女神(そいつ)によって虚空(こちら)に引きずり込まれた存在(もの)――』


「――やはり(・・・)か!

 だが、ならば何故、女神なるもの(そいつ)転生者創造そんなことをしている?」


『……これは、推測ではなく、突飛な空想に過ぎないのですが。

 女神(やつ)は、異世界の存在(じんぶつ)材料(もと)に、虚空の神性(かみがみ)を作り出そうとしているのではないか、と」


「神性創造――ならば、それは、世界を創造する(・・・・・・・)ことと同じだ。

 虚空(なにもないせかい)を、実体(かたちあるせかい)に作り直そうとしている――そういうことか!」


ヘルは(てのひら)で顔を掴むかの勢いで触れ、{思考}を続ける。


「――それ(・・)()に、考えるのであれば。

 魔物(・・)によって虚空(・・)に飲まれた人間は――


『――資源(なんらかのリソース)

 そう考えるのが妥当でしょうか。』


「……いや、それはわからない(・・・・・・・・)な」


『――と、言うと』


「虚空には何もない(・・・・)

 少なくとも、我々の観測できるもの(・・・・・・・)は、何一つ(・・・)


――当然、それは前提(・・)として。


「そう。

 大気(・・)さえ、魔力(・・)さえ、上天光(エテル)さえ霊魂(ソール)さえ、

 塵芥の一つさえ。存在しない空間(ばしょ)


 ――そこに、人間由来の(ヒトでできた)非人間的物質(ヒトたりえぬもの)があるのなら――


 それ(・・)は恐らく、ヒトでないもの(そうではないもの)を素材とした(で、できている)方が、効率が良い存在(よりしぜんなもの)だ」


『!』


――ヒトでない(・・・・・)もの。


――この世界の(・・・・・)


だからこそ(・・・・・)

――異世界(どこか、とおく)から?



「しかし、それにしても――

 一度、会ってみたい(・・・・・・)ものだな、その女神様(・・・)とやらに」


『……!』


「……ふふっ。初めて見る表情(・・・・・・・)だ、メガリス。

 そんなに{嫌}なのか?」


『……ええ。

 ですが、一度会って殴打しなければ(はなしをつけなければ)ならないので』


「そんな顔も美しい(・・・)な、メガリス。

 なら、お前(・・)()で――


 【女神とやらを、見つけてみよう】じゃないか」


『――!』


――ああ、全く(・・)

簡単(・・)に、言ってくれるものだ――



――当機(ボク)は、思わず。

{心底楽しげ}な、{柔らかな微笑み}を浮かべてしまっていた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ