178話【空に座して星は在り】
直接、防御しては――[推定被害:甚大]。
――ならば!
『下だッ――!』
極光の直撃を頭部装甲で受け――その勢いで、方向転換!
――下方!
帰還の好機は幾らでもある!
『[噴進:最大駆動]ッ!!』
黒鉄機の奮進を最大量活用し、少しずつ極光が遠のいていく。
ボクは、そうして。
振り下ろされる極光の勢いそのままに、黒霧の中の底海へと落ちていった――
――そして。
幾許かの時間が過ぎ。
「――あぁ!?」
当機は、海の中に着水した――
『――セタ』
「何だってんだい、メガリス。
まさか、やられた――とでも、言うんじゃないだろうねェ」
『まさか。
単なる回避動作の一貫です』
「ハ! 随分と長い回避動作もあったもんだ。
それで――どうするつもりなんだい、相棒?」
『敵中枢個体を撃滅します。
力を貸してくれますね、セタ?』
「ハッ! いいぜ! 穢焔の残骸星には苛々してんだ。
女神みてェな[曖昧な感覚的特徴]がしてるからなァ!」
――それは――
そう、か。
セタも、そのように感じているのか。
やはり"お前"なのか、女神――?
「――で、だ。
どうすりゃいいんだい、相棒?」
『まずは上空へ――
――そう。打ち上げてください、共感者』
「ハ! 打ち上げるときた!
いいぜ、やってやるよ――〓-〓-〓-〓-〓!」
周囲の海が流動する。
影の龍骨格が、拡張機体に触れる。
そして流水は龍へと変わる!
顎より転じた龍は天を向け、当機を掴んだまま飛翔する!
「――ハ!こりゃあいい!
鈍重な水球よりは[比較:高速度]だ!」
地の底は既に彼方。――疾い。これは。
天駆ける影にして水流たる龍――これは、新たな力だ。彼女の。
当然――セタも、成長しているのだ。
……ならば、当機はどうか?
当機の手に入れたもの――あの、得体のしれない――楔の力。
あれほど容易く、"暴走"しうるほどの存在とは――
――だが。
使いこなす、使いこなしてみせるとも。
そう、その為に――黒鉄機を、組み上げたのだから。
黒霧と巨人骸は、少しずつ切り替わりゆく。
意志なき石巨人を傍目に――龍は、飛翔する。
黒霧の中は次第に輝きを増し――
――太陽との対峙は、近づく。
脚を越し――巨人の胴を越えた辺りで。
――生じる、違和感。
『これ、は――?』
ただ、動かぬ侭であった、千腕巨人の躯。
だが、肩以降は――削れ、抉られ、所々が刳り貫かれている。
石切場の石のように、一つだけ抜いた積み木細工のように。
まるで解体か、分解でもするかのように、丁寧に取り外されている。
翼獅子が、やったのか?
どうやって――否、それよりも。何のために――
――その疑問は直様、解消されることとなる。
『な――!』
その切っ先を龍に向ける、星の数ほどの光の剣。
――先程の極光か? だが、この数は――!
それは、両翼を大きく広げ。
荒ぶる翼獅子は、攻撃を開始した――




