177話【干戈】
『――甘いッ!』
獅子の白き爆炎を斬り裂き――その眼前まで迫る!
散った爆炎は果敢無く消え去り、残存する影響など跳ね除ける!
大穴を開けた些か滑稽な有様目掛けて――腕部兵装を、叩き込む!
――だが! 敵影は俄に遠ざかる!
高速での後方移動! 空中で? ――然り! 後方飛翔!
光翼を羽撃かせ当方目掛けて強風を叩き込み――反動高速後方移動!
強風は尚も勢いを増し、高質量物体さえ吹き飛ばし得る激烈な拒絶!
だが――だが!
それで、当機を――拘束したつもりか!
虚無を越える翼が――強風如きに屈するものかよ!
――[虚空飛翔鎧:出力増加]...[承認]
『[加速]――突撃!!』
強風を突き抜け、羽撃く獅子目掛けて――
『[全速]――[騎兵槍突撃]!!』
――腕部兵装を、叩き込む!!
目標指定は正確明白、顔面が在るべき無形の貌!
超高速駆動で翔け抜けて、遮るものなど在りはしない!
――だが。
遮るものは、不意に出現した。
『ッ!』
障害は――格子状の光の帯!
当然、実体! 衝撃は受け止められ、衝力は失われる!
――何だ、これは――
回答は眼前に在る! 獅子の背より伸びる翼を見よ!
枝葉のように根のように――解き解され解体されて、幾多の光の帯状実体を檻めいて展開! 強度在る実体として突撃を受け止めたか!
――やってくれる!
だが――
防御は、打ち砕き蹂躙するために在る!
『[兵装駆動]!
――【炸薬式振動騎槍】!』
腕部兵装が、唸る!
甲高い爆発音と共に内部機構が爆発的超駆動し、失われた衝力を補って余りある一撃が光帯檻を――粉砕突破する!
砕けた光帯は端からほろほろと崩れゆき、それが連鎖するように消滅していく!
――然り、好機!
逃す理由はない――
『――[全噴進・最大稼働]ッ!!』
炸薬槍を構えたまま、今再び突撃を仕掛ける。
光帯檻が再展開される様子はない。
解れた光翼は少しずつ再生を始めているが――遅い!
『――そこだッ!!』
穿ち抜く、寸前。直撃の数瞬前。
何かが、[反応:感あり]。
『ッ!?』
上方、極光めいた流動光。
――否! これは――
『――刀剣――!』
千切れ解れた光の帯は――消滅せず! 密やかにしめやかに再利用されていた!
これほど強大になる迄気づかせず、機を伺っていたというのか!?
やはり難敵! 容易く勝てる相手ではない!
この翼獅子には、悪意がある!
――どうする? 攻撃を迎撃に切り替えるか?
否――それではただ隙を晒すだけだ。
ならば――決まっている!
『――【炸薬式振動騎槍】!』
当方が疾い――数瞬!
翼獅子が極光を振り下ろす直前――炸槍が、直撃する!
光帯よりは低強度――深々と突き刺さり、掻き回す!!
{狂乱}と{苦痛}! 声あらば叫声がなりたてたであろう{怒り}と{嘆き}!
明確な手応え――有効打たりうる激烈な一撃!
然れど――ああ、然れど!
振り下ろされる極光は、既に間近に迫っていた――




