16話【人間、そう呼ばれる者は】
少し、驚いた。
その基準なら、今のボクもニンゲンじゃないか。
この機械の体を得た後も、お前は人間として生きろと、そう言うのか女神は。
……ああ、まったく。女神め、女神め。
ボクがどれだけ人間であったことを悔いていたのか、知っているくせに。
必ず女神を探し出して、文句の一つも言ってやる。
【絶対に、女神を探し出してみせる】
首を洗って待っていろ、足を洗って震えていろ。
[蛇眼を灰汁で洗う]のはその後だ。
その結果、血で血を洗うことになったとしても。
ボクは、女神を、捕まえる――必ずだ!
「――め、メガリス?
どうした、そんな怖い顔をして。
可愛い顔が台無しだぞ?」
「でも怒った顔もキレイです~!
さながら、戦女神ですね!」
『……失礼、取り乱しました。
ごめんなさい、ヘル、フルカ』
「はぅっ! ……シュンとした表情も美しい……。
あ、いや、うん、気にしなくていいぞ!」
「お嬢様はメガリスさんに夢中極まりないですね! 良い傾向だと思います!」
――しかし、それにしても。
……相も変わらず、この少女扱い。
これは、その、なんというか……。
『……恥ずかしいので、お止めください』
ボクだって可愛らしい女の子は好ましく思うが。
自分がそういう姿になってみると、如何せん気恥ずかしさが大きく上回る。
美しさは罪とはよく言ったものだが、罪には罰が付きものである。
ああ、全く……残酷なものだ。生きるということは……。
『……そう言えば、先の返答について、気になる点があるのですが。』
「なんだ? 気になるな、教えてくれ」
『[仮定]……[知性ある魔物]が存在するとして、それは【人間】足り得るのですか?』
そこが気になる点だ。
魔物は人間足り得るものなのだろうか?
「そうだ。
知性ある魔物も分類上、【人間】として定義している
主として敵性存在だが、時折我々の味方をしてくれる奴も居る。
もし合うことがあったなら、何か話をしてみると良いかもしれないな」
【知性ある魔物】さえもが【人間】足り得る、と。
許容される範囲が、少し広過ぎはしないだろうか?
……とはいえ、あの神話の内容を省みるに、納得がいかないというわけではない
地上世界の崩壊、それはあまりにも窮状、その極地であろう。
そんな中、生き残った人間たちが生きて行くには、そう言った知性体の助けがなければ
生き延びることは不可能に近いものだった、というのは想像に難くない。
そういった過去があるからこそ、今の時代にそれだけの知性体が人間として扱われる、
と云う"律"上の権利を手にすることが出来たのだろう。
少なくとも、奇異の目で見られることは無さそうだ。
一つ、安心材料を得ることが出来た。これは収穫だろう。
『……ともあれ、質問への回答に感謝します』
「ああ、また分からないことがあったら聞いてくれるといい。
私が知っていることなら、きっと教えられるだろう」
と、ヘルが自慢げな顔で言った後。
途端に顔を歪め、何かをこらえるような仕草をする。
『……? どうかしましたか、ヘ――』
「――っクチュン!」




