159話【太陽の矢に射られ】
だが当然――手段は打っている!
『――【鏡皮装甲】!』
閃光とともに拡散し吹き付け押し寄せる烈しく甚だしき膨大な熱量!
太陽風めいて押し寄せる劫火を、事前展開済みの鏡面反射装甲が防ぎ、逸らし、受け流す!
至近距離での――直撃! されどその耐熱性は健在!
高熱放射は当機を灼けず、砕けず、穿てず――精神介入されることもない!
『……く……』
視界全てが緋に染まる。
炎熱を越えて最早白熱たる熱量放射は、耐えど耐えども終わる気配はない――
然り――
――圧倒的、火炎!猛火!灼熱!
虚無そのものさえも焼き尽くさんとする――不条理の邪焔!
嗚呼、見よ! 虚空が――空間そのものが燃えている!!
炎熱を断ち切るはずの鏡面装甲、だがそれに妨げられて居ても尚――
――感じる、凄まじい程の超高熱!
拡散展開さるる穢焔が、奴だというのか……!
『――!』
やがて灼熱風は放出力を失い――凪ぐ。
周囲には燃え盛る幾つもの弧状焔。
動こうとしないところを見ると、なんらかの[起動待機装置]――大技の為の?
とにかく、重要なことだ――穢焔本体の、場所は――?
『!』
先程居た位置には――不在!
――ならば当然、考えられることだ。
然り、目眩まし! あの白熱放射は、囮の類い! [本当の狙い]を察させぬが為の!
――ならば。
本命は何か、何処か――
周囲に感知装置を凝らす。
弧状焔の何れかか、それとも――
『――ッ!?』
――直後! 脚部の感覚が喪失する!
『これは――まさか!』
虚空に食われたとでも言うのか?
否――当機の脚部は鉄血で展開された装甲に覆われていた。
ただ虚空に飲まれただけ、というのは考えづらい。
ならば、喪失現象は、何だ?
決まっている――
穢焔の、攻撃!
それ以外に在るものかッ!
『――!
ぐッ……あぁ……!!?』
喪失部位に、さらなる違和感!
[喪失部位]――[脚部先端]、[脚部関節部]、[脚部胴体接続部]...
破壊が――広がっていく!?
『――【脚部分離】!!』
やむを得ない――だが、これは危険だ!
破壊の連鎖――即ち、攻撃が継続していることに他ならない!
故に脚部は捨てる!
切断し分離した状態でも継続攻撃が感染するというのなら――
――その時は、詰みだ。
鉄血本体説に賭けて、全鉄血解放する他ない。
……そうならなければいい、が。
『――ッ』
切断分離より、ほんの僅かに時が経つ。
本体側に、連鎖破壊は生じていない。
――取り留めたか。
ならば次撃へと備えよ――このままでは、[段階的不利]だ。
直後。
どこからともなく、聞こえる声。
そして、共に聞こえてくる――
――低音域の、混沌たる狂笑!
姿見せぬ穢れた太陽は、一頻り嘲り嗤うと――
――弧状焔の影から、大量の楔火弾を持ち出した――




