139話【応酬】
「! なにを――」
『見ていてください、ルゥ』
造兵廠から、銀色の糸状物体がしゅるしゅると出力されていく。
――然り、これは――
「【キースメルリェ】――?
――ううん、ちがう!」
銀糸を睨み、激高するルゥ。
「これは――おまえだ! メガリスさん!!
おねえちゃんを[吸収し]、てにいれた[キースメルリェの力]だ!」
『――[否定]。
[その推測]は、完全に否定されます』
「ちがうって、いうの!? なら――」
『――抑!』
「ッ!」
『当機の鉄血は、[本来の肉体]などではありません』
「え、でも――じゃなくて!
たとえ[鉄血]が[本体]じゃなくっても!
[鉄血]がおねえちゃんをとりこんだのなら――おなじこと、だよ!」
『――そして』
「!」
『鉄血に、眷属神を取り込む[該当機能:無し]』
「っ――うそ、だよ!
だって、[巨人の骸]をのみこんで、[武器]にした!
[同化/一体化した]としか、おもえないよ!!」
『[部分的否定]。
鉄血で加工出来るのは――
――[生命無き存在]だけです』
「う……それが、ほんとうって――いえる?」
『肯定。
それに――』
「……それに?」
『あなた達の機体も、紛れもない鉄血です』
「!!」
『もし【眷属神の捕食】ができるのなら。
【眷属神の捕食】をしたいのであれば――
――捕食されていないのは、おかしいでしょう』
「……ぅ」
『然り、即ちこの己自身は【眷属神の捕食】はできないですし、
【眷属神の捕食】をしたいとも思っていないのです』
「う……ん」
『どうか――分かってください、ルゥ。
ボクは、貴女の姉妹神を、捕食などしていないと』
「う、うぅ――」
ルゥは小さな頭を抱え、悩ましげに体を揺らす。
揺れる動きに合わせるように、長い緑髪がゆらゆら揺れる。
「……わかった。
メガリスさんは、おねえちゃんを、たべてない――
――でも、それじゃあ。
メガリスさんは、おねえちゃんに――なにをしたの?」
『それは――
――直接、話して貰った方が――早い、ですね』
「――えっ!?」
ボクは造兵廠から伸びた銀糸を手に乗せ、ルゥに向けて差し出した。
『触れてください、ルゥ。
それで――おおよその所は、理解できるかと』
「う、うん――」
ルゥは、恐る恐る手を伸ばし――
煌めく銀糸に、ゆっくりと手を触れた。
「!!」
目を真円状にして、{驚愕}を示すルゥ。
「――え、どうして――そんな!?」
ルゥは会話をしている。
相手は、然り。もちろん――
「おねえちゃん――ほんとうに、そうなの!?」
震える掌の上で、銀糸はほんの少しだけ。
鈍く煌めく光を反射し、その痩身をくねらせた――




