13話【空の裂け目を泳ぐもの】
「こっちですよ、オーチヌス!」
フルカの呼び声に答えるように、鉄の鯨はボク達の方へと近づいてくる。
『あれは、一体……?』
幻獣めいた現地生物?
技術発展による航空機械?
古代兵器?
神の御業?
少なくとも前世の常識では、あんなものが飛ぶとは到底考えられない。
……つまり、ボクにとっては、初めて目にするものにほかならない。
「よし、いいぞ!」
そうこうしてる内に、移動は完了していたようだ。
鉄塊鯨が、ボク達の真下に鎮座する。
――ぶつかる!
……そう思った瞬間、ボクらの全身を柔らかな光が包む……!
するとどうだろう。
身体はふわふわと浮かび、減速し、鉄鯨の背の上に降り立つことが出来た。
『……[疑似重力の、力場]……? 引力装置を搭載している……?』
「はいっ! お嬢様、メガリスさん、全員{乗艦完了}ですっ!!」
「うむ! 大丈夫か、怪我はないか? メガリス」
『……はい、砥ぎたての刃の様に無傷です。損傷一つありません』
そんな事よりも――気になることが、多すぎる。
『まず、この……空飛ぶ艦? とは何なのでしょうか』
「ふふ、驚いたな! これぞ――フルカ、説明を」
「はいはーいっ! おまかせ下さいッ!!」
フルカはやけに高いテンションで説明を始める。
あるいはコレは、彼女の所有するものなのだろうか?
「これは私の義兄にして最高の相棒!
天地に広がる無間の虚空を翔けるもの!
つぶらなおめめがチャーミング! 空を泳ぐ鋼のクジラっ!
その名も――潜空艦・オーチヌス号! なのです!」
『――まるで意味が分かりません』
「ひどいですよ!?」
いや、もちろん全く分からないというわけではない。
この艦が空を泳ぐと言うこと、名前は[オーチヌス号]であること。
そして、フルカの義兄……ということは。
おそらく、フルカの家族が発見した[意志ある古代遺物]であること。
分からないことは……ふむ、一つあった。
『[天地に広がる無間の虚空]――特に、【虚空】とは?』
「そこですか!? ええっと、なんと説明したものか……」
「……そうか。メガリスは、"この世界"についてまだ、何も知らないのだな」
狼狽するフルカを見かねてか、ヘルが助け舟を出すようだ。
「[虚空]とは、"粉砕された世界"――[浮遊島]の間を隔てる、特殊な空域のことだ。
――【大破砕】によって砕かれた、この世界のな……」




