130話【その忌むべき者の名は】
「メガリスさん!」
「――大丈夫そうだねェ、行けるのかい?」
『――肯定。
よくぞ、保たせてくれました」
「……はやく、外骨格を――そろそろ、限界、なんだけど……」
三者とも三様で[再融合]を迎える。
――今ならば修復が間に合う。それだけでも十分、それ以上だ。
それに、手に入れた素材があれば――また、異なる兵装とすることもできるだろう。
とはいえ、今は――修復の段階だ。
『【超拡張装甲外骨格・第一装甲】
【 同上 ・第二装甲】並びに【第三装甲】
――[再展開]!!』
大量に溢れ出した鉄血が、融合機体の表面を塗りつぶす。
そして銀色の表皮は――幾重にも重ねられた、強固な鎧へと変わる!
「……んっ……」
同時に――肉の躰は、再び安定性を獲得する。
ネールの呻吟も、次第に呼吸が整いつつある。
これならば、問題はない。
融合機体は、健在だ――少なくとも、今は。
――さて。
[胸中の疑念]を、ルゥに……伝えるべきだろうか?
――考えるまでもない。
{仇たる者が"全くの別人"かもしれない}
――などという、滑稽極まりない不安と、疑念の話だぞ?
自分の身に置き換えてみろ――女神でなく、例えば――
――そっくりな、誰か。を――
……。
――ああ、全く。
厭になる――
……そうだ、とにかく。
[否:復讐対象者]は、よろしくない。
確認をすべきだ。
見敵必殺に拘るべきではない。この場合は――
「メガリス、さん?」
『――!
応答、ルゥ』
「どうか、したの?」
――ええい、儘よ。
『肯定、ルゥ。
敵対存在について、一つ疑念を得ました』
「――ぎ、ねん?
あれは、あのくそったれの――シャハズマルズだよ?」
『その人物ではない――と、したら?』
「っ!?
どういうこと、なの!?」
『穢焔の只中に踏み込んで――分かったことがあります。
穢焔は――以前の[錆砂に狂いし総部族長]とは[不完全一致]です』
「どうして!? どういう、こんきょで――?」
『――笑い声です』
「!?
あの、けたたましい[二重奏の狂笑]が、どうしたっていうの?」
『当機が観測した狂笑は――
――明らかに、[独奏の悲笑]でした。
その上――』
「そのうえ……?」
『穢焔は、{助けを求めて}いました。
何に対して、誰に対してかは[判断不能:情報の不足]』
「!?
そんな……でも、じゃあ――
――あれは、なんだっていうの!?」
――当然の疑問。
推論に推論を重ねるのであれば、一つの仮説を組み立てられなくはない。
――だが……。
『……捕らえれば、分かることです』
「それは、そうだろうけれど……」
『――[出撃待機]を。
[構築演算状況:八割五分]です』
「……うん。
まあ、いいよね。
[捕獲]で、すべて、わかるのなら」
『――[肯定]、ルゥ』
淀む言葉と、切れる会話。
だが[この仮説]は生憎と、もう少し考える必要があるものだ――




