126話【戦嵐、光輝燦爛と】
[# [残存燃料]を[代償指定]し、叶うる限り魔法力と成す。
現出せよ、散たる術式――【風切る落葉】!! ]
「――[連繋術式]。
{"冠蛇の輪は巡り、閉ざし鎖すは小さな世界――
幾重にも幾重にも、積みて重ねた多層領域――
皮膜より脱すること叶わず、ただ巣で静止せよ"}
即ち斉術【入子格子】――
――この飛葉嵐から、逃れ得ると思うな」
展開された欺瞞銀粉が舞う範囲そのものを利用した斉術!
散らばり舞い踊り切り裂き回る葉状の刃は半円状の領域を作り出し、内外の干渉を遮断する!
――内部より外部へと離脱すること叶わず。
外部より内部へと侵入すること叶わず――
然り、此れこそ正に檻、正に結界!
内側と外側は遮断された!
躍り舞う結界内の幻影と黒鳥。
それを有効利用するも無為に終わらすも、逃れ得た融合機体次第!
故に――[可及的速やかに]!
...[造兵廠展開構築待機]――
――だが、[第一に]。
舐り擦る背徳の焔を、どう無力化すればいい?
重要なのは、そこだ。
ただの火焔であれば、多量の流水である海を直接ぶつけてみる――というのもあるいは有効かもしれない。
然れど――穢焔は当然、只の火焔である筈もなく。
そもそもセタは、装甲越しにあれ程の精神的苦悶を受けていたのだ。
水剋火――と、単純に言い切れるものでもないだろう。
となれば――そう、粘焔は如何なる物体なのか。
焔のようで強酸のようであり、精神に干渉する霊的物質であるようにも見える。
――少なくとも、血肉の人形でどうにかなるとは思えない。
あの精神干渉力……おそらく、錆砂が肉体を乗っ取る時に使われるもの、あるいはその副産物だろう。
であるならば――然り。
魂無き人形など、精神操作の格好の餌食ではないか。
――そして。
融合機体が人形を素体としている以上、このまま闘うのも危険――そう考えられるか。
――ならば、個別に戦闘行為を行うか?
それなら――例えば。
強酸焔の干渉を軽減ないしは無効化できると思われる――ルゥであれば、何らかの勝機を見出すことが出来るだろうか。
――いや、もしそう出来るのであれば――
彼女は最初から、他人の協力など仰がないだろう。
……となれば全ては一要素でしかない。
有する戦力に優越も有余も無く、銀の弾丸は手元にない。
思案せよ、思考せよ、思量せよ。
――使えるものは、全て使うのだ。
……[捕縛]は、可能か?
セタやルゥの時と同じように――
――否、現時点ではそう言わざるを得ない。
辛うじて捕らえられても、我が身を火刑に処すだけだろう。
――ならば、どうする?
――本当に、打つ手がないと?
――いいや。
あるはずだ、手段は。
今まで見た、情報の中に――!
『――!』
――嗚呼……。
眼の前に、あるじゃないか――
穢焔を、捕らえうる物質が!
『……〓〓、なら――』
旋回飛翔葉刃の中を散乱し、結界内を燃え広がりゆく穢焔。
寄生者が打ち捨てた、骸の残骸。
――群陽が、天頂へと至る。
陽光の眩さは増し、鏡地表より照り返す灼光はどこまでも苛烈で。
その、赫奕たる白光の中。
――なお燦然と、玲瓏たる反射光が一つ。
戦士は死して、何を残すものか。
葉嵐に遮られようと、骸は疎らな直射光を浴びて。
鉄血の拳に穿たれた、銀鏡の表皮が光を映した――




